アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、最近行われたと想定されている財務省・日銀のドル円為替介入にコメントしている。
ドル円の為替介入
ドル円相場は160円に到達した後、4月29日と5月2日に日銀の為替介入によって下落したと考えられている。
ドル円の15分足チャートは次のようになっている。
2回の為替介入で160円から153円まで7円分下落したことが分かる。ちなみに最後の小さい下落は雇用統計によるものである。
為替介入は効果があるのか?
介入は短期的に見れば効いたように見える。ドル円が7円下落したのだから明らかである。
だが長期的な意味という点ではサマーズ氏は懐疑的だ。彼は次のように述べている。
資本市場の巨大さを考えれば、日本がやったような規模であっても為替介入は効かないと考える根拠は明らかだ。
為替介入はただ民間の巨大な資金の流れに押し流されてしまうだろう。
29日の介入は5兆円、2日の介入は3兆円程度だと推計されている。過去最大に匹敵する規模なのだが、しかし円相場の取引高はBISのサーベイから計算すると90営業日でおよそ1.6京円となり、日銀の介入金額が米粒にも等しい規模でしかないということが分かる。
クリントン政権で財務長官まで務め、実際に為替介入の経験もあるサマーズ氏は当然この計算を知っており、その上で介入が長期的に円相場に影響を及ぼすことはないと言っているのである。
実際、サマーズ氏はそもそも介入の短期的な効果にさえ懐疑的らしい。彼は次のように述べている。
為替が通常の水準から大きく離れた時には政府は介入したがるが、為替が通常の水準から大きく離れた時には時々調整があるのは当たり前のことだ。
要するに、2回の介入でドル円7円下がったことでさえ、すべてが介入の成果ではなく、単にこれから起こるはずだった短期的な調整を事前に誘発しただけのものだと言いたいのである。
だからそれを差し引くと介入の効果は実際には短期的にもほとんどなかったものに等しいとサマーズ氏は言いたいらしい。
結論
ということで、元財務長官のサマーズ氏は、為替介入に対して他の誰よりも辛辣である。サマーズ氏は次のように続けている。
だから、円がここから更に下落すると確信するわけではないが、仮に円が更に上昇するとしても、それは介入の成果というよりは単なる調整だと言うべきだろう。
サマーズ氏は為替のこれまでの(そして今後の)動向に対して、どう動こうとも為替介入はほとんど無関係だと考えている。
そしてそれは8兆円と想定される介入の規模と、90営業日で1.6京円という円相場の規模という数字に裏付けされている。
2年前の日銀介入では、サマーズ氏は「投機家に絶好の機会を与える」とまで言っている。元「中の人」だからこそ言える辛辣な見解だろう。