元財務長官ラリー・サマーズ氏の奇妙なトランプ大統領批判

イギリスのEU離脱とアメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の勝利を経て、リベラルな方々の言い訳が始まった。元米国財務長官で著名な経済学者のラリー・サマーズ氏が、少し待って欲しい、ポリティカル・コレクトネスは悪くなかったのだと嘆願している。

是非言い分を聞いてみよう。われわれはあなたがたとは違い、他人の口を無理矢理塞ごうとする根性は持ち合わせていない。われわれはあなたがたよりオープンである。だからあなたがたの話を聞こうではないか。

トランプ氏勝利後のマイノリティ迫害

サマーズ氏はアメリカ大統領選挙を受けての自身のブログ記事(原文英語)において、トランプ氏勝利後のマイノリティに対する迫害を非難している。

(選挙の結果を受けて)黒人、同性愛者、ヒスパニック、イスラム教徒、障害者などの学生や女学生らは、これまで享受してきた身の安全や社会からの受容などが揺らいでいることに恐怖している。

それは事実である。そして確かに人種差別は容認すべきではないアメリカとヨーロッパの野蛮な歴史的文化である。そしてトランプ氏の勝利後にそうした感情が野蛮な形で表出したということもいくつかの報道で確認できる。しかしながら、その責任をトランプ氏に押し着せることは完全に間違っているのである。

何故ならば、そうした感情はトランプ氏の勝利が契機となって表出しただけであり、トランプ氏が作り出したものではないからである。そしてマイノリティに対する反感が近年において高まったとすれば、その原因はマイノリティに対する反感、しかも正当な抗議を含んだすべての反感を、ポリティカル・コレクトネスという誤った方法によって弾圧しようとしたリベラルの人々にある。彼らは国境という概念さえレイシストのレッテルを貼り付けて切り崩そうとした。その結果がヨーロッパの悲劇である。

また、アメリカにおける黒人の権利擁護の政治活動は、その本来の目的から逸脱し、黒人コミュニティに対して警察が法を執行すること自体を人種差別とみなすようになった。その結果、アメリカのいくつかの都市は無法地帯となっている。これについてはイェルサレム・ポストが少し前に指摘していた。

こうしたリベラルによるマイノリティの権利濫用によって、マイノリティの人々は本当のレイシストだけではなく、至極まともで理性的な大勢の人々まで敵に回してしまった。その結果が今回のアメリカ大統領選挙である。この本質を見逃してはならない。

だからマイノリティの人々の本当の敵は、トランプ氏ではなく悪意あるリベラルの政治活動家たちと、それを考えなしに支持した市民なのである。彼らによる言論弾圧は、マイノリティに対する社会の受容を決して向上させてなどいない。むしろリベラルの偽善が普通の人々をマイノリティの敵にしてしまったのである。

サマーズ氏の非合理的トランプ氏批判

トランプ氏の勝利という衝撃的なイベントが、本来優れた経済学者であるサマーズ氏の合理的思考を奪ってしまった。彼を含め、多くのリベラルの論客が茫然自失となっている。サマーズ氏の非合理性は少し前に書かれた別の記事(原文英語)でも確認出来る。その記事のタイトルは「誤った設計の景気刺激は労働者階級の生活を悪化させるだけだ」であり、そこではサマーズ氏がトランプ氏の財政出動を批判している。

ここの読者であればその奇妙さに驚くことだろう。何故ならば、サマーズ氏こそは何年にもわたって財政出動を強く主張してきた経済学者であり、その論理はここでも何度も伝えてきたからである。そのサマーズ氏が、ほとんどサマーズ氏の経済理論のコピーとも言えるトランプ大統領の経済政策を批判している。これほど奇妙なことがあるだろうか? その理屈は以下のようなものである。

道路の再舗装や、国内に6万もある壊れかけの橋の修理、学校設備の高度化や空調システムの近代化などの一番効果の高いインフラ投資は、利益を産まないという理由でトランプ氏の政策から除外されている。

ここの読者であれば、わたしと同じように、サマーズ氏の言い分は意味不明だと感じるだろう。これまでのここの読者でなくとも、すぐに同じ感情に支配されるはずである。サマーズ氏の主張とトランプ大統領の経済政策がどれほど似ているかを比べた以前の記事から、トランプ氏の発言を抜き出してみよう。

われわれはこの国のインフラを直す必要がある。この国のインフラは史上最悪の状態だ。アメリカにある橋の半分は信じられないほど危険な状態だ。それらはほとんど落ちかかっている。道、トンネル、病院、そして空港も直さなければならない。

この記事を読んでもらえばより分かりやすいのだが、そもそもトランプ氏の経済政策はサマーズ氏の複製も同然であり、公共事業についてもこの通り除外するどころか明示的に含んでいる。特に空港の改善はサマーズ氏がこれまでブログなどで強く主張していたことをトランプ氏はそのまま復唱しているのである。記事を読んでもらえば分かるが、両者ともニューヨークのラガーディア空港とケネディ空港の設備劣化に言及しているところまで同じである。

にもかかわらずサマーズ氏は一体何を言っているのか? トランプ氏がリベラルの価値観から逸脱したというだけで、サマーズ氏ほどの頭脳がこれほど理不尽な攻撃を行うのか? 何度読み返しても信じられないほどである。

茫然自失のリベラル

要するに、リベラルの政治活動家の茫然自失がそこまで来ているということである。著名投資家のジョージ・ソロス氏などは大統領選挙後に反トランプの抗議デモを速やかにでっち上げている。

彼らはこういう無茶苦茶な理屈と政治活動こそが人々のリベラルへの反感を高め、そして今回の選挙でトランプ大統領を産んだのだということに気付くことはない。彼らには真実に気付かないままで居て頂こう。しかし一般の人々にはそうであっては困るのである。

日本語で書いても仕方のないことだが、特にマイノリティの方々にはこう言いたい。いい加減気付いてはどうか。リベラルはマイノリティの敵である。リベラルこそがアメリカにおいてマイノリティの正当な権利を毀損し、難民でも何でもない中東移民をただ自分の政治的信条のために騙してヨーロッパに移住させ、そしてそこで貧困生活を送ることを余儀なくさせた張本人なのである。

リベラルの人々は決してマイノリティの暮らしを良くしていない。トランプ大統領を産んだのは彼らなのである。人々はいつになれば、自分たちを害する人々を盲目的に支持するのを止めるのだろうか。いつの時代もこうなのである。