11月8日のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利したことを受けて、アメリカの各地では抗議デモが行われている、などの報道を耳にして、やはりトランプ氏は問題ある候補者だったのだ、などと思う読者があるとすれば、こうしたデモが誰のどういう意図によって計画されたものであるかを考えるべきだろう。純粋な政治活動など存在しない。すべては強い利害をもった誰かによって計画され、演出されたものである。
政治活動家ジョージ・ソロス氏
恐らくは世界で最も優れたヘッジファンドマネージャーであり、またその資金力を活かした左翼政治活動家でもある大富豪のジョージ・ソロス氏は、こうした抗議活動を直接演出する立役者である。彼は世界中に無数のNGOを立ち上げ、各国の政治に非常に大きく介入している。
例えば少し前に話題になったパナマ文書を管理し、どの部分を公開するのかを独占的に決定している国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)とは中立なジャーナリスト団体でも何でもなく、ジョージ・ソロス氏らによって資金援助された政治団体である。どれだけの情報が個人の政治的主張によって操作されていることだろう。
そして今回の大統領選挙では、ジョージ・ソロス氏はトランプ氏を強く批判しており、1月のダボス会議では「ヒラリー・クリントン氏の勝ちは決まった」などと発言していたが、選挙の結果トランプ氏の当選が明らかになると、今度は早速トランプ大統領に対する抗議活動の演出に取り掛かっているようである。
MoveOn.org
ソロス氏の主宰するMoveOnというNGOは11月9日、ドナルド・トランプ氏の大統領当選に抗議する集会を全米規模で主催(原文英語)し、それに賛同する人々に参加を呼びかけた。
MoveOnのメンバーと提携者は今夜、11月9日、アメリカ中の都市で平和的な集会を行います。われわれはドナルド・トランプ氏の不寛容主義、外国人恐怖症、イスラム教恐怖症、女性蔑視を受け入れない姿勢を改めて表明します。アメリカのためにともに戦う決心を行動で示すのです。われわれはその戦いがまだ終わったわけではないと信じています。
結構なお言葉ではないか。人々に対する寛容と民主主義が大好きなリベラルの方々は、移民政策の悲惨な失敗に対する人々の正当な抗議にだけは徹底した不寛容を示し、そして政治献金まみれのクリントン氏に対し自前の資金で勝利したトランプ氏の当選という民主的結果は絶対に受け入れないらしい。
こうした主張は今やほとんど破綻している。それはイギリスのEU離脱とトランプ氏の勝利によって十分に示された。しかしソロス氏の政治活動は終わることがない。世界恐慌の時代にこの世に生まれ、第二次世界大戦をナチスに追われるユダヤ人として生き延びてきたソロス氏にとって、そして投資家としては既に誰よりも成功したソロス氏にとって、左翼的政治活動への妄執は死ぬまで消えることがないだろう。
しかし彼の矛盾はイスラエルの新聞によって既に批判されていた。今こそこの記事を読み返してみる時期だろう。
ソロス氏の支援する団体はすべて共通の基本的価値観を持っているのだ。それらの団体はすべて、西洋の国家や地域がそれぞれ固有の法や価値観を維持する能力を弱めるものだ。それらの団体はすべて、経済的、政治的、科学的な自由を阻害するものだ。そしてそうした阻害活動は民主主義、人権、人種差別反対、男女差別反対などの名のもとに行われる。
黒人団体、メルケル氏の移民政策、そしてイスラエルにおける多民族化までに至るソロス氏の活動とは、現地に混乱を作り出し、現地の当局を麻痺させて、自身の社会を守る能力を失わせるか、あるいは彼らには自分の安全保障を守る権利などないのだと思い込ませることにあるのである。
今から思えば、このイェルサレム・ポストの記事はトランプ氏の勝利を予測していた。この記事は以下の意味深な言葉で結ばれている。
多くの意味で、ドナルド・トランプ氏の政治活動はクリントン氏などではなく、ソロス氏の活動に対する直接の反発である。
われわれが確実に言えるのは、大手メディアの報道など一切あてにしてはならないということである。すべては演出されている。人々は他人にコントロールされることを辞めるべきである。そうでなければ少数の限られた人間の政治的利害のためだけに世界中が滅茶苦茶になってしまうだろう。