世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が世界経済フォーラム(通称ダボス会議)においてCGTNのインタビューに答えている。
外交で大切なこと
インタビューのテーマは主に米中関係だが、ダリオ氏はこのインタビューで政治全般において大切なことについて次のように語っている。
相手の立場から物事を見ること。バイアスのかかっている可能性のある自分の目だけから見ることがないようにすること。そうすれば起きてはならない大惨事が起きないように相手と同意することができる。
これは外交だけではなく、人間関係においても同じことが言えるだろう。
だがダリオ氏のこの言葉をどれだけの人が理解するだろうか。多くの人は自分の目からしか物事を見ない。その上に彼らが自分の目だと思っているものは、多くの場合メディアや政治家が彼らに与えた他人からの完全な借りものなのである。
ダリオ氏の政治観
ダリオ氏が多くの人々と政治の話で噛み合わないのはそのためである。例えばダリオ氏はアメリカ人でありながら、台湾問題で一般には台湾を支持していると考えられているようなアメリカの政治家について、単に戦争を引き起こそうとしているだけだと切り捨てている。
西洋の価値観から離れることなく生きてきた多くの人々は、ダリオ氏が中国寄りだと言う。
だがこうした傾向はダリオ氏だけではなく、著名投資家全般に見られる。例えばDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏は一貫してアメリカのウクライナ支援に反対している。
ウクライナ情勢に対する西洋メディアの見方はこうである。ロシアがウクライナに攻めてきた。
だがダリオ氏の言うように相手の立場からウクライナ情勢を見ればどのようになるか。ベルリンの壁崩壊後、西側は勢力圏をそれ以上東側に広げないとロシアと約束したにもかかわらず、NATOの勢力をロシア国境近くまで広げ、2022年のミュンヘン会議でウクライナのゼレンスキー大統領に対ロシア用核兵器保有を仄めかさせてロシアとの戦争状態に陥ったのである。
だが多くの人々はミュンヘン会議でゼレンスキー氏が何を喋ったかさえ知らない。それがバイアスなのだが、彼らは気付いていないし気付くつもりもない。
結論
ダリオ氏によれば、相手の立場から物事を考えれば相手との不必要な紛争を避けることが出来る。逆に言えば、それを意図的にやらない人は自分から戦争を推し進めているのである。
ちなみに著名投資家の多くがこうしたバイアスから逃れていることは偶然ではない。相場においてバイアスから逃れることが投資家の仕事だからである。
例えば誰もが米国株に投資をすれば長期的なリターンは安心だと考えている。それが市場に支配的なバイアスである。だが以下の記事のように、著名投資家たちはまったく別のことを考えている。
ヘッジファンドの創始者とも言うべきジョージ・ソロス氏は「市場は常に間違っている」と言った。支配的なバイアスの誤りを見つけ、その反対に賭けることが投資家の仕事だからである。
バイアスから逃れることが出来れば、戦争を回避することも市場で資産を増やすこともできる。だが多くの人は死んでもそれをやりたくない。人は皆、好きなように生きれば良いのである。