さて、2024年初のジェフリー・ガンドラック氏の自社動画配信である。まずは金利について語っている部分を取り上げよう。
2023年末の金利低下
2023年、ジェフリー・ガンドラック氏はアメリカの金利低下を予想してきた。そして長期金利を見る限り、その予想は年末にかけて報われている。
金利低下は債券価格上昇を意味する。ガンドラック氏は長期国債を買って値上がりで利益を得たわけである。
だが彼は今回の配信では次のように言っている。
最近の債券価格上昇を楽しむのは良いが、そろそろ脱出について考え始める時期ではないかと思い始めている。
金利の上昇要因
長らく金利低下を予想してきたガンドラック氏がそう言うのは何故か。
まず彼が心配しているのは莫大な政府債務である。アメリカの財政赤字は年々拡大している。ガンドラック氏は次のように述べている。
景気後退時には財政赤字は大きくなり、失業率が低い時には景気が良いので財政赤字は小さくなるべきだ。だが2015年以降はそうなっていない。
ガンドラック氏が特に懸念しているのは、景気が良い時にも財政赤字が拡大している2015年以降の状況だ。アメリカの失業率とGDP比財政赤字を並べると次のようなグラフになる。
全体の傾向として、失業率が上がれば(景気が悪くなれば)財政赤字が増えていることは良い。だが2015年以降をよく見ると、失業率が下がっている時にも財政赤字は増えていることが分かる。
何の必要があって赤字を増やしているのか。政治家は常に票田に配るための予算が欲しいからである。
金利上昇と政府債務
ゼロ金利の時代には、借金をどれだけ増やしても問題がないということがまことしやかに囁かれていた。だが緩和政策はインフレを引き起こし、金利は上昇した。
その結果アメリカで何が起きているか。金利が上がったということは、借金に利払いをしなければならないということである。
ガンドラック氏は次のように言っている。
GDP比で見た国債の利払い費用は基本的にほとんど垂直に上がっている。
GDP比の国債利払いのグラフは次のように推移している。
このチャートは最新のものを何度か載せ続けているが、もうずっと上昇し続けている。
それが金利や国債市場にどういう影響を及ぼすか。アメリカ政府は利払いのために国債発行を増やすが、国債発行によって利払いが増えるという負のループに突入している。
金利は上昇するのか
ガンドラック氏ら債券の専門家はこの事実を重く見ている。脱出する方法がないからである。
そしてガンドラック氏は次の景気後退でも財政赤字拡大のトレンドは継続されると見ている。彼はこう述べている。
次の景気減速期にはインフレ政策が行われるだろう。そしてインフレが再燃する。
人々は不安になり、大規模なインフレ政策を再開することになる。
ガンドラック氏が金利低下のトレンドの終わりについて考え始めているのはそれが理由である。インフレ再開による金利上昇が景気後退による金利低下を打ち消す。
彼は金利の今後の動向について次のように予想している。
だから次の景気後退では金利は急激には下がらない。
債券の上昇相場はこれからある程度は続くだろう。景気後退になれば10年物国債の金利は恐らく3.3%程度まで下がるだろうが、その後の展開には人々は驚くことになるだろう。金利はその水準を維持できなくなるからだ。
だからガンドラック氏は「そろそろ脱出について考え始めている」のである。
彼はこう続けている。
今はまだそのタイミングではない。何故ならば、景気後退はまだ来ていないからだ。公式に景気後退とはなっていないし、景気後退に対応するためのパニック的な政策もまだない。
だがそれはこれから起きようとしている。