DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで来年のアメリカの利下げと株式市場への影響について語っている。
アメリカの利下げ
FOMC会合ではFed(連邦準備制度)は来年3回の利下げを示唆した。状況はインフレ率が下がっているのに金利が高過ぎると主張していたガンドラック氏の予想通りの方向に進んでいる。
いつも行動が遅いとパウエル氏を批判しているガンドラック氏だが、今回の会合ではガンドラック氏がパウエル氏を評価している部分がある。
ガンドラック氏は次のように述べている。
わたしの耳が正しければ、パウエル議長はインフレ率が2%に到達するより前に利下げしたいと言った。インフレ率の動きは勢いを持つということを彼は理解しているからだ。
ガンドラック氏は以前より、インフレ率が目標の2%に到達してから金利を下げるのでは遅いということを言い続けてきた。彼は以前次のように発言している。
インフレ率が9%が2%まで極めて急速に下落するならば、下方向に行き過ぎると考えない理由が何かあるだろうか?
何故2%で止まるのか? そこに何か魔法でもあるのか?
アメリカのインフレ率は次のように推移している。
事前の利下げ
中央銀行が金融政策を変更してからそれが実体経済に効き始めるまでには時間がかかる。だからインフレ率が実際に2%まで下がってから金融引き締めを緩め始めると、経済はそのまま下まで沈んで行ってしまうのである。
実際、利上げが遅すぎてインフレ率が上に突き抜けたということがコロナ後には起きている。ガンドラック氏は次のように述べている。
2年前にわたしが批判したように、パウエル議長は動くのが遅すぎ、インフレは彼らの予想である4%よりも5%高いところまで上昇した。
今、インフレ率は同じ速度で下落している。
ガンドラック氏は2021年にインフレ率上昇を放置し続けるパウエル氏を批判していた。
だから同じようにインフレ率の下落を止めたければ、インフレ率が2%に到達する前に引き締めを止める必要がある。
早めの利下げと株式市場
もしパウエル議長の示唆した利下げタイミングが十分に早いものであるならば、それは株式市場にとってどういう影響を持つだろうか。ガンドラック氏はアメリカ経済の見通しも含めて次のように述べている。
来年は景気後退になるだろう。
金融市場はそれを織り込みつつあるように見える。
そして金融環境の緩和というFedの方向転換の良い面が表れつつある。リスク資産が最初は上昇するということだ。
米国株は以下のように推移している。
ガンドラック氏はこの株価上昇がまだ終わらないと見ている。彼は次のように述べる。
前回のFOMC会合からリスク資産は非常に調子が良い。そしてそれは年内は変わらないだろう。
だが一方でガンドラック氏は来年第2四半期の景気後退入りを予想しているので、あと半年で景気後退になるとすれば米国株はここからかなり急速に下がらなければならなくなるということにならないだろうか。
筆者はガンドラック氏の景気後退のタイミング予想をやや早すぎるものとして考えてきた。そして株価下落は景気後退の半年ほど前であることが多いことから、株価下落もタイミングとしてはまだだと主張してきた。
ガンドラック氏の株式市場への見解と景気後退のタイミング予想はやや矛盾しているように見える。
景気後退と株式市場はどうなるだろうか? 以下の記事も参考にしてもらいたい。