引き続き、DoubeLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回は原油価格について語っている部分を紹介する。
ハマス・イスラエル戦争と原油価格
10月に始まったハマス・イスラエルの戦争は、今のところ金融市場にそれほどの影響を与えていない。
株価にほとんど影響を与えていないのは良いとしても、原油価格がむしろ下がっているのは意外である。原油価格は次のように推移している。
この動きについてガンドラック氏は次のように語っている。
原油価格が80ドル付近まで下がっていることに誰でも驚いているはずだ。戦争の危険があればある種のオイルショックを考えるのが普通だろう。紛争は拡大しているのだから。
西側諸国の政治家たちはかなり無理筋のイスラエル擁護をしている一方で、中東諸国はパレスチナを支持している。
これが本格的に西側と中東の対立になれば、中東諸国は原油を西側諸国に供給しなくなる可能性もある。そうなれば西側諸国は原油不足に陥るだろう。
原油価格下落の理由
だが現状では原油価格はむしろ下がっている。その理由についてガンドラック氏は次のように推測している。
今起こっているのは、需要がそれほど強くないということだろう。例えばヨーロッパ経済はあまり芳しくない。原油価格が下がっているのは景気が減速しているからだ。
原油価格は確かにややこしい状況にある。中東情勢が原油価格を上に動かす可能性のある要因となっている一方で、来年に予想されている景気後退は原油価格にとって大きなマイナス要因である。
だが恐らくそれだけではないだろう。筆者の意見では、原油価格の現状は金融市場がパレスチナ情勢はエスカレートしないだろうと高をくくっている結果である。
エスカレートの鍵を握っているのはイランである。イランがパレスチナ側で本格参戦すれば、イスラエルの背後にいるアメリカと対立する構図になる。そうなれば、原油の取り合いは現実的な可能性となってくる。
だが現状ではイランはガザで多数の子供を殺しているイスラエルやそれを支持するアメリカを批判はしているものの、本格参戦する姿勢を示してはいない。
コモディティ市場見通し
原油市場の見解は、この状況がそのまま続くというものである。だが原油市場がそれを織り込んでいるということは、実際にイランがより本格的に状況に関わった場合、それを想定していなかった原油価格は上がらざるを得ないということである。
ガンドラック氏は次のように述べている。
中東で懸念すべき事態が起これば原油価格は間違いなく上昇するだろうが、今のところ原油を含むコモディティ市場全体は完全に眠ったままだ。
他のエネルギー資源はどうだろうか。例えば筆者が7月に紹介したウランの価格は原油価格と似た動きであるものの、原油価格より好調である。
ウラン価格は次のように推移している。
原油も最近下がったとはいえそれまでは上がっていたのだから、買いでも売りでも利益にならなかった。ウランは買いで利益になっている。
こういう相場ではウランのような個別要因に賭けるのが良いのだろう。だがウランも本格的な景気後退になれば下がるだろう。その意味では、以下の記事で説明したような、景気後退に賭けながらも景気後退が遅れるリスクをヘッジする取引の一種として考えるべきだろう。
また、先月からのハマス・イスラエル戦争で急上昇したコモディティと言えばむしろゴールドだが、金価格は最近になって下落に転じている。
先月からのゴールドの急上昇が危ういものであることは以下の記事で既に説明しておいた。この記事の記述通りだろう。
基本的にはコモディティ市場は景気後退で来年には下がることになる。だが景気後退で緩和再開を予想するのであれば、特に貴金属は下がったところで買いである。だがそれを考えるのはもう少し先だろう。