サマーズ氏、米国のスタグフレーションの可能性を示唆

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏が、Bloombergのインタビューでソフトランディングの可能性とスタグフレーションの可能性について語っている。

アメリカ経済の見通し

アメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)は今週、金融政策決定会合であるFOMC会合を行なった。

FOMC会合で発表されたFedの経済見通しによれば、高金利政策によって来年にはインフレ率が3.3%に落ち着く一方で、実質経済成長率は1.5%までしか落ちず、失業率は4.1%までの上昇で済むらしい。

だがアメリカの失業率は今にも4.1%を超えそうである。

引き締め政策でインフレを抑制しても経済は大事には至らないとするFedの見通しについて、サマーズ氏は次のように述べている。

Fedはいまだにかなり楽観的だと考えている。

根拠は、アメリカ経済がFedの利上げと量的引き締めを受けていよいよ減速しつつあるからである。

アメリカ経済の減速

サマーズ氏はこう説明する。

労働者の日(訳注:9月4日)以来、まだそれほど時間は経っていないが、消費がやや弱まっているように見える。ローンの滞納も増えてきている。来年にかけて期限が来る債務もある程度多い。

ローンの滞納率のチャートは次のようになっている。

一番簡易なローンであるところのクレジットカードに絞れば滞納率は次のようになっている。

アメリカではコロナ禍に1人当たり日本の3倍以上の現金給付が行われたので、クレジットカードの支払い残高があった人は給付された現金でそれを支払ったために滞納率が下がったが、滞納率はその後コロナ前以上の水準にまで上がってきている。

これはつまり、これまでアメリカ経済を支えてきた緩和マネーが消費者の手元から消えつつあることを示している。ジェフリー・ガンドラック氏の予想と合致している。

これまでは緩和マネーがまだ消費者の手元に残っていたから、GDPの内訳でも消費だけは強かった。

だがそれもそろそろ終わりである。

結論

そしてインフレになるまでお金をばら撒いたツケを払う段階がそろそろ訪れる。だからサマーズ氏は次のように言う。

だから、Fedの言うように失業率が少し上がるだけでインフレ率が2%に戻る可能性も確かにあるが、それは予想というよりは目標と言うべきだろう。

むしろ彼らはインフレが強まって驚くことになるか、経済が弱まって驚くことになるか、あるいは両方が実現してスタグフレーション的な状況になるかのどれかになる可能性が高い。

何故ならば、実体経済がいよいよ弱まってゆく順序になった今、原油価格が上昇しているからである。

サマーズ氏はソフトランディングを予想する人々に向けて次のように言う。

ここ数十年に起こったすべての景気後退の前には人々がソフトランディングについて語っており、しかも彼らは間違っていた。

人々はやや楽観的過ぎるのではないか。

恐らくは、減速する実体経済を気にせず高値で推移する株式市場も念頭に入っているのだろう。