Fed(連邦準備制度)は機能不全ではないのか。要するにイエレン議長は何をすれば良いのか分からないのである。
7月26-27日にアメリカの金融政策決定会合であるFOMC会合が開催され、27日、Fedは金融政策の維持を決定した。タカ派で知られるカンザスシティ連銀ジョージ総裁のみが0.25%の利上げを主張した。
声明文の内容
声明文は前回の会合からほとんど変わっていない。変わった部分を挙げてゆくが、経済情勢について語った箇所では「雇用統計は5月には弱かったが6月は強かった」など単なる感想文であり、数字さえ見れば子供でも書ける日記の領域である。
他の箇所に目を向けても、「家計の消費は強い伸びが続いているが、企業の固定投資は弱まっている」などもGDP統計の結果そのままとなっている。何故この文を書くだけで博士号を持った人間が必要なのか甚だ疑問である。
今回はイエレン議長の記者会見もないので本当にこれだけである。Fedが今回の会合で何かを言いたかったとすれば、「短期的な経済へのリスクは軽減された」の部分だろうが、これもBrexit後の市場の混乱が収まったことを考慮すれば市場にとっては何の驚きもない文章である。為替市場なども目立った反応を見せていない。
利上げ見通し
最近のFOMC会合の声明文がほとんど意味のない文章になっていることは、Fed自身が利上げ見通しを指し示す能力を失っていることを意味している。要するにアメリカ経済の今後がFedには分からないのである。
Fedが利上げについて分からないと言うのであれば、投資家はその疑問を経済に対して聞くべきである。経済に関しては、現在のところ昨年に立てたわたしの予想がほぼそのまま当たっている。以下はアメリカのGDPがまだ好調だった頃の記事である。
アメリカ経済が減速し、Fedが利上げを諦めて金融緩和に向かうという長期的見通しに変更はないが、それまでの短中期的な道筋については随時経済指標を確認し、予想を微調整してゆく必要がある。そのためにはもうすぐ発表される4-6月期のGDP統計が重要となるだろう。
米国株についてはどうなるか? 少なくともFedが利上げを急がないことは金融市場全般にとってプラスとなっている。米国株が史上最高値を更新したにもかかわらずFedが利上げを急いでいない点には事情がある。イエレン議長は身動きがとれない状況だが、それでも勢いで余計なことをしてしまった黒田総裁よりは、慎重である分まだまともと言うべきかもしれない。