引き続き、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオを紹介する。
ドラッケンミラー氏の相場観
ドラッケンミラー氏の今年の相場観だが、まずアメリカ経済については非常に悲観的な見通しを示している。利上げの効果が時間差で表れ、アメリカ経済を大きな力で沈めてゆくという予想である。
一方で、株式市場については1970年代の物価高騰時代の再現を予想している。
だが個別株に関してはドラッケンミラー氏の意見は違う。彼はAI関連株を強烈に推している。
特に、高度な計算に必要なGPUを生産するNVIDIAが彼の筆頭銘柄である。彼は以前次のように述べていた。
NVIDIAのような企業の受注や利益はハードランディングでも70%上がるのではないかと思っている。
歴史を見れば、景気後退でも持続的に非常に良い決算を出せば、株価は問題ないということが分かる。
実際、3月末のポジションを開示する前回のForm 13FでもNVIDIAはドラッケンミラー氏の最大ポジションだった。
AI関連株買い増し
さて、では今回はどうなっているか。まずNVIDIAだが、6月末のポジションを開示する今回の開示でも最大ポジションに留まっている。
いや、それどころかドラッケンミラー氏はNVIDIAを買い増している。このポジションは保有株数で言えば20%も増加し、金額は4.0億ドルとなっている。
NVIDIAの株価は次のように推移している。
好調である。
5月の急上昇は決算発表である。ドラッケンミラー氏は3月末から6月末の間に買い増したことになるので、彼が決算前に買い増したのか、決算後に買い増したのかは定かではない。
だが、NVIDIAが決算後の水準でも他の銘柄に比べて割高とは言えないことは、以下の記事で説明しておいた。
また、3番目に大きいポジションであるMicrosoftもAI関連銘柄である。ポジション規模は2.8億ドルであり、株価は次のように推移している。
NVIDIAほどではないが、悪くない推移である。ちなみにドラッケンミラー氏はこちらも買い増しており、保有株数は13%増えている。
他に大きいポジションとしては、韓国のAmazon.comと呼ばれるCoupangがある。金額は3.6億ドルである。
こちらは年始までは酷く低迷していたが、ようやく浮上してきたという感じである。
結論
Form 13Fに報告されているポジション総額も、前回の23億ドルから29億ドルへと増額されている。
ドラッケンミラー氏は同時に空売りを行なっていることを公言しているが、そちらはForm 13Fには掲載されないので、全体としてドラッケンミラー氏のポジションがどうなっているかは定かではない。
だがAI関連銘柄を買い増したこと、ポジション総額が増えていることの両方から考えて、株式市場にやや強気になったのかもしれない。
市場全体が下がる場合、ハイテク株は他の株よりも大きく下がることが多いので、いくら個別要因に強気でもわざわざ買い増したりはしないだろう。かつての師であるジョージ・ソロス氏とは反対のポジション変化である。
あるいはドラッケンミラー氏がハードランディング予想を取りやめたとも思えないので、筆者と同じくハードランディングまでまだ時間があるという考えなのかもしれない。
AI関連銘柄については割高だという意見が出ているが、普通に計算すればそうとは思えない。むしろ米国株全体の方がNVIDIAよりよほど割高である。
筆者はNVIDIAを買い逃しているので仮に下がれば買いたいが、NVIDIAが下がるとすれば市場全体が下がるからであって、割高だからではないだろう。