アメリカの最新6月のCPI(消費者物価指数)統計が発表され、アメリカのインフレ率は3.1%となった。一時9%まで上がっていたインフレ率はかなり下落し、目標とされている2%まで近づいたことになる。
急降下を続けるインフレ率
まずはインフレ率のグラフを見てみよう。CPIの前年同月比の上昇率は次のようになっている。
まさに急降下である。既にインフレ率は3.1%まで落ちてきたのだから、数字だけ見ればもうほとんど平時に戻ったも同然である。
インフレ率はこのまま目標値まで下がり、アメリカ経済は景気後退に陥ることなくそのまま進んでゆくのだろうか?
急降下の理由
以前、米国株のこれまで40年の長期的上げ相場がこれからも続くという主張について、以下のように述べたことがある。
「米国株は40年上がり続けたからこれからも上がる」と主張するためには、40年上がり続けた理由をまず発見し、それが今後も存在し続けることを証明しなければならない。
当たり前である。そしてこのインフレ率の急降下についても同じことが言える。
まず、インフレ率が急上昇してから急降下した理由は、原油価格が急上昇して急降下したからである。原油価格のチャートは次のようになっている。
そしてこの原油価格の急落は去年6月から始まっていることに注目してもらいたい。その結果、CPIのチャート(上昇率ではなくCPIの数字そのもの)は、去年6月で折れ曲がっている。
2022年6月を最後に上昇の角度が変わっているのが分かるだろうか。
7月以降のインフレ率
今回の3.1%というインフレ率だが、これが前年同月比の数字であることに注意したい。
前年同月比とは前年の同じ月からの1年間でインフレ率がどれだけ変化したかを示したものだが、この考え方では当然、比較対象となる前年同月の数字が高ければ、上昇率は低くなる。
前年同月比のインフレ率のここまでの急降下は、比較対象となる前年の数字が急上昇していることに大きく起因している。だが上のグラフを見て分かるように、その急上昇は6月で終わっている。
だから来月に発表されるアメリカの7月のインフレ率からは、これまでのように無条件でインフレ率が下落してゆくような状況にはならない。
結局インフレ率が何処に落ち着くかは、住宅のインフレやサービスのインフレなどCPIの内訳を見てゆくことで分かるだろう。そちらについては別に記事を書くつもりである。
だが確かなことが1つある。インフレ率が下落するならば経済成長率も下落し、インフレ率が下落しないならば、金融引き締めが来るだろうということである。詳しくは以下の記事を参考にしてもらいたい。