アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergによるインタビューで、アメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)による米国時間6月14日のFOMC会合結果にコメントしている。
結局タカ派なのか、ハト派なのか
6月14日、Fedは去年初頭から続けてきた利上げの一時停止を発表するとともに、年内あと2回の利上げを行うということを表明した。
だがサマーズ氏はこの決定に異論があるらしい。彼はこう述べている。
Fedの決定には少し困惑している。
何故か。サマーズ氏によれば、結局Fedがタカ派だったのかハト派だったのかはっきりしないからである。
彼はこう続ける。
今回の会合で利上げしないというのは理解したが、では何故経済成長とインフレ増加を示唆し、今後の利上げ継続を表明しなければならなかったのかということは分からない。
今回の会合で利上げ停止をしながら、更なる利上げを示唆し、しかも以前の予想よりも失業率が上がるとは想定していないと表明するという戦略の一貫性が理解できない。
結局どちらなのか。普通に受け止めれば、シリコンバレー銀行の破綻に始まる銀行危機と、まだ景気後退に至っていない実体経済全体という分断された状況を受けて、状況を見極めたいという慎重な立場に見える。
だが、前回の記事に書いたが、この分断は2022年以来の利上げが実体経済のそれぞれの部門に影響を及ぼす速度の違いによるものである。
経済のセクターにはすぐに影響を受けて減速するところもあれば、なかなか影響を受けないところもあり、GDPや失業率のような一番最後に影響を受ける数字の減速を待っていてはその時にはすべてが手遅れになっているだろう。
だから一見妥当に見える慎重なアプローチは実は意味を為さないのである。
結局、官僚が自分の頭で金利を決めようとするところに問題の原因があるのであり、市場が金利をすべて決めるようになれば、経済指標に表れない景気減速もすぐに金利に織り込まれるようになり、すべては解決するだろう。だが政府は政策金利を自分のためにコントロールしたいのである。
Fed内部の対立
また、サマーズ氏はタカ派とハト派が混じり合ったようなFOMC会合となった原因を次のように指摘する。
だから今回の会合は、一貫して明確な経済分析の結果というよりは、Fed内部の政治的調整によって動かされたように感じる。そしてそれは少し憂慮すべきことだ。
これについてはジェフリー・ガンドラック氏も次のように述べていた。
Fedのメンバーの一部は政策金利がこれから何年も5%以上に留まると考えている一方で、別のメンバーらは2.5%まで下がると考えている。
何回か前の会合ではパウエル氏はメンバーを統率できていたようだった。誰もが同じ意見を持っていた。だが今ではパウエル氏はもう一度群れを統率しなければならなくなっている。彼は全力を尽くしているが。
2021年にはパウエル議長がインフレの脅威を無視していた一方で、一部の連銀総裁らは素早い利上げを主張していた。そして結局、パウエル氏は折れなければならなくなった。
同じような状況がもう一度来ようとしているのか。Fed内部の意見対立をもう一度細かく見てゆく必要があるだろう。