引き続き、ジョージ・ソロス氏とともにクォンタムファンドを創業したことで有名なジム・ロジャーズ氏の、World Scholars Academyによるインタビューである。今回は優れた投資家になるために必要なメンタリティについて語っている部分を紹介したい。
優れた投資家になるための素質
優れた投資家になるためにはどういう素質が必要だろうか。それは生まれ持ったものだろうか。習得できるものだろうか。
ロジャーズ氏は、優れた投資家になるための素質について聞かれ、次のように答えている。
好奇心、そして疑う心だ。
好奇心は当然必要である。AIなど新しい技術に投資をしたければ、新しい技術に興味を持ってそれを調べる必要がある。
では疑う心とは何だろうか? ロジャーズ氏は次のように説明している。
耳にしたことや読んだことをすべてそのまま信じてはならない。自分で調べること。自分で確かめること。誰もが空は青いと言っていても、自分で窓の外を見て本当に空は青いかを確かめること。
自分で確かめること。聞いて考えたことが正しく正確かどうか分かっておくこと。特に投資の世界では多くの話は正しくないのだから。誰もがうまい話や新しい投資対象を持ってくる。自分で調べて確かめることだ。
うまい話とはつまり、知らない人からメールが来て、宝くじに当選したからキャッシュカードと暗証番号を送ってくれとか、政府に保険料を払えば老後を安泰に過ごせるお金が後で返ってくるとか、インデックスを買って寝ていれば年4%儲かるとか、首相が岸田氏でなくなれば自民党はきっと変わるとか、そういう話だ。
特に金融業界にはうまい話が多い。ロジャーズ氏は次のように語っている。
ウォール街で働き始めた時、奇妙な話をよく耳にした。だが何故そんなことが言える? 何故そんなことが信じられる? お金が空から降ってくることはない。
お金が木から生えてきたりはしない。
「インデックスを買って寝ていれば年4%儲かる」、だが根拠は何なのだ? 年4%損する羽目にならないと何故言えるのだ? 「米国株に投資していれば過去40年儲かり続けた」、だが過去40年と今後40年が同じようになる根拠は誰が示したのだ? それを示さなければ、その理屈は例えば隣の田中さんは90年生きたからもう90年生きると言うのとまったく同じである。
むしろ筆者は、過去40年米国株を押し上げてきた原因そのものが今後数十年消滅するということを根拠をもって以下の記事で示した。
だから過去40年は今後40年を予想するための根拠にはまったくならないのである。
だが自分にとって都合の良いものを信じたい人にとっては、根拠があろうがなかろうが関係ないらしい。彼らはむしろ根拠を避ける。信じたいものを信じていられることが彼らの幸福だからだ。それが長期には大損への道だとしても、彼らの目は2メートル以上先を見ることができない。
紙幣印刷といううまい話
経済政策でも同じである。「紙幣を印刷してばら撒けば誰もが簡単に幸福になる」、確かに紙幣印刷で人々は紙幣を手に入れたが、紙幣の価値が下がったために紙幣でものが買えなくなり、インフレが起こった。
当たり前の帰結なのだが人々は元々インフレが物価上昇という意味だということさえ理解していなかった。それでインフレ政策といううまい話を信じたわけである。
むしろ彼らにとっては、それがうまい話であるという現実を直視するぐらいなら死んだ方がましだっただろう。働きたくもない仕事に人生のほとんどを費やし、その報酬の半分以上を所得税と社会保険料と消費税によって自民党に奪われている自民党支持者の人生は現実逃避で出来ている。
いや、インフレ政策はインフレ(物価上昇)と看板に書いてあるので、うまい話ですらなかったわけだが。それでも彼らはそれを好んだ。まさに墓穴を自分で掘ったわけである。
ロジャーズ氏は次のように言う。
お金を稼ぐことは難しいのだ。だから誰かが「心配ない、これは簡単だ」とか「今回はこれまでとは違う」などと言い始めれば、部屋を出ることだ。