ロンドンの住宅市場が加熱している。その事実自体はニュースではなく、ロンドン市民は毎年値上がりする家賃に長らく不満を抱いてきたが、状況が改善する兆しは見られない。下記はイギリス全土と大ロンドン市の住宅価格の年次変化率である。
2008年の金融危機前の水準ほどではないが、イギリスの住宅価格は着実に上昇している。イングランド銀行も当初は「住宅価格の高騰が見られるのはロンドンだけであり、一つの市だけのために金融政策を変えることはない」と言っていたが、3日にロイターが伝えたニュースでは、ようやく「ロンドンだけの問題ではない」と認めながらも、「価格高騰は住宅の不足が問題であり、イングランド銀行としてできることはない」とした。これは、住宅建設のために充分な環境を整備していないとして、暗に政府の責任を示唆しているのである。
こうしてみれば、ドイツで見られるような住宅価格の高まりは住宅高騰の初期でしかない。ドイツ連邦銀行の理事は、最近のロイターによるインタビューで「住宅価格の推移を注視している」としたが、当局が単に懸念を示している状況は、要するにまだ買っていて良いということである。ユーロ圏の住宅価格が今後も上昇する要因は下記のように複数挙げられる。
- 低金利の住宅ローン
- 債券の金利低下による投資先の不足
- 今年後半に行われる長期資金供給オペによる過剰流動性
また、イングランド銀行はFRBや日銀よりも金融引き締めに近いため、高くなりすぎたロンドンの住宅価格に警戒を示す投資家は、代わりとなる投資先を探し始めている。
株式市場ではベルリンの不動産銘柄が真っ先に買われているが、本命はパリである。都市の構造的問題もあるが、ドイツとフランスでは対処すべき失業者の数が違うのである。フランスは建設業に対して何らかの対策を行わなければならない。
今後焦点が当たるのは、引き続き緊縮財政に対する政治的反発と、ユーロ安がユーロ圏の物価指数に、そして欧州中央銀行の金融政策にどのような影響を及ぼすかである。引き続き、経済指標の発表を追いながら分析していきたい。