中東諸国などで構成されるOPECを中心とした産油国の集まりであるOPEC+が原油の減産を決定したことで、原油価格が急騰している。これについて各国の政治家たちがコメントしているので取り上げたい。
OPEC+の減産
需要と供給とインフレの関係を知っている人には言うまでもないことだが、産油国が生産量を下げるということは価格の上昇に繋がる。
だから低迷していた原油価格はOPEC+の発表で再び80ドル台に乗った。
このことに各国の政治家が反応している。例えばバイデン政権のジャネット・イエレン財務長官は次のように述べている。
OPECの決定は残念な行動だ。価格への影響がどうなるかを正確に推し量るためにはもう少し待たなければならないと思う。
エネルギー価格を下げることが重要である時に非常に非生産的な行動だ。
だがおかしいではないか。リベラル派である民主党のバイデン政権は化石燃料の削減を標榜し、産油企業が原油を生産できないように、SDGsだかESGだかという脱炭素政策で金融機関が産油企業に対して融資できないようにする規制を次々に打ち出していた。
脱炭素政策とは再生可能エネルギーを推進するだけの政策ではない。産油企業への融資に罰を与えることで原油の産出量を意図的に減らす政策である。
需要と供給とインフレについて知っている人には言うまでもないことだが、その結果は当然エネルギー価格の高騰に繋がった。それが今の物価高騰の大きな要因である。マクロ経済学者のラリー・サマーズ氏が当然ながらそれを批判していたが、バイデン政権は耳を貸さなかった。
こういう自称グリーンな人々は原油の削減を望んでいたではないか。自分から産油企業に罰を与えて原油を生産させないようにしていたではないか。産油国が減産しようとした時にだけそれを批判するというのはまったく筋が通らない。
日本政府の反応
ちなみに日本の政治家もOPEC+の減産に反応している。松野官房長官は「この決定により需給のタイト化や不透明さが増し、原油価格の高止まりにもつながりかねない」と表明している。
だが「原油価格の高止まり」とは何のことだろう? 原油価格はもう1年近く下がり続けている。
いまだにウクライナ情勢でエネルギー価格が云々という記事を見かけるが、原油価格は既にウクライナ前の水準からかなり下がっているのである。
経済関係の記事を書く人間はせめて原油価格のチャートぐらい見ればどうかと思うが、日本の原油価格が以前よりも上がっているのは確かに事実である。
何故かと言えば、2022年にはアベノミクス以来のインフレ政策である量的緩和政策が奏功して大幅な円安となったからである。
2022年のドル円上昇にはアメリカの高金利によるドル高も大きな要素だが、インフレを目指して頑張っている日銀のインフレ政策のお陰で去年の日本円はインドネシアルピアなどの新興国通貨よりも更に弱い状態となっており、ドル円はそこから幾分か下がったものの2022年の円安は大きくまだドル円は高い水準にある。
だから原油価格がもとの水準まで下がってもドル円が戻らないので円建ての原油価格は高いままなのである。日本政府は自分のインフレ政策で見事インフレになったことを誇るべきではないのか。
結論
この現象はすべてこうした政治家連中が自分で引き起こしたことである。日本政府はもう何年も円安を望んでいたではないか。そして実際に円安になって原油価格が上がったではないか。彼らはインフレとともにそれを望んでいたのだから喜ぶべきではないのか。
結局、円安とインフレが何も喜ぶべきことではないということに日本国民は今更気付くことになった。そんなことはアベノミクスが始まった頃から分かっていた話ではないか。
一方で欧米のリベラル派の人々も原油のない世界に協力してくれているOPEC+に感謝すべきだろう。彼らはエネルギーを燃やすのが嫌で風呂に入るのを止めるほどに原油を嫌っていたのだから、何故それを喜ばないのか。だがそろそろ風呂には入ってほしいものである。