国民投票直前、イギリス世論調査でEU離脱派が大幅リードし逆転

イギリスは本当にEU離脱を選んでしまうかもしれない。

ロイターによれば、イギリスで6月8日から9日にかけて行われた世論調査で、EU離脱支持派が55%、EU残留派が45%となり、離脱支持派が10%差の大幅リードで優勢となった。世論調査の数字は調査方法ごとに異なり、一概に比べることは出来ないが、先月までは多くの調査で残留派が優位となっていたのであり、ここまで大差で離脱が優勢となったのは初めてではないか。

本当にEU離脱してしまうのか?

もしイギリスが6月23日の国民投票で本当にEU離脱を選ぶことになれば、それは驚くべきことである。ほとんどの国の国民はこうした局面で現状維持を選ぶだろう。スコットランドで行われたイギリスからの独立を賭けた国民投票では、直前まで離脱と残留が拮抗していたものの、本番においては離脱の票を撤回した有権者が多かった。ギリシャは債務問題における国民投票でユーロにNoを突きつけたが、それはツィプラス首相がユーロ離脱はせずドイツとの交渉材料にするだけだと明言したあとに支持が広がったものである。

しかし今回のイギリスの国民投票で離脱を選べば、イギリス政府は本当に離脱の手続きを始めなければならないだろう。キャメロン首相自身が国民投票はこれ一回きりだと明言していたのだから。しかし残留派がリードしていた時に余裕を感じながらそう発言した残留支持派のキャメロン首相は、今頃かなり焦っていることだろう。

前回の記事でも触れたように、EUが失敗したプロジェクトだということ自体はほとんどイギリス国民の総意である。移民政策はヨーロッパにテロと性的暴行事件をもたらした。しかもテロも集団性的暴行も一度きりではなく、パリでもブリュッセルでもケルンでもダルムシュタットでも現在進行形で何度も繰り返されているのである。この連鎖はいつ終わるのか、誰にも分からない状態である。

ドイツが主導している移民政策や経済政策に怒りを感じている国は、イギリスのみならずヨーロッパ大陸にも存在する。ハンガリーやポーランドなどは反EUであり、他の国でもドイツの暴走に積極的に賛同する声は少ない。しかし、そのなかでも現状維持への誘惑に負けず、離脱という決定的な選択をもってNoを叫ぶことの出来る国はほとんどない。そしてそうした国が存在するとすれば、それは何処よりも先ずイギリスなのである。

イギリス人は、周囲を支配する意見に流されず、誤ったものに対してそれは誤っているとはっきり言うことのできる国民である。エリザベス女王が中国の政府高官の非礼をカメラの前ではっきり批判したニュースを思い出したい。

慎み深い日本の天皇陛下であれば考えられないような発言だが、しかしそれぞれに美徳があるのであり、エリザベス女王に象徴される「信条を貫く」というイギリスの美徳は、こうした国民投票では抜群の効果を発揮するだろう。

イギリス国民は今非常に難しい選択を迫られている。EUが暴走しているからこそ、距離をおいて離脱するべきなのか、それとも関与できる位置に身を置き続けるべきなのか、有権者はいま真剣に考えているはずである。離脱派の急先鋒、元ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が国民投票について語った発言を再び引用しておこう。

これはわれわれイギリス人にとって、節度と常識の声としてヨーロッパの救世主となり、目の前で繰り広げられる無秩序を止めるためのチャンスなのだ。

イギリス人の「節度と常識の声」が選び取るものを見させてもらおう。どちらを選んだとしても、それは尊敬に値する選択である。