米国時間12月13日に最新のCPI(消費者物価指数)統計が発表され、アメリカのインフレ率は前年同月比で7.1%となり、前月の7.8%から急減速した。元々減速を予想していた市場予想も下回り、ドルが急落している。
急落するインフレ率チャート
現在金融市場の最重要指標であるCPIだが、まずはチャートを掲載しよう。
急減速継続である。急上昇した時とほぼ同じ角度で急落している。1970年代の物価高騰時代のインフレ率チャートもそうだったことを思い出したい。
急上昇しているインフレを急に止めようと思えば、緩やかに止めることは出来ず、急落させるしかないのかもしれない。そして急落を止めようと思えば今度は急騰させるしかなくなる。
どうやら筆者が2021年12月に提唱したインフレ第2波シナリオが本当に近づいてきたのかもしれない。
減速続くエネルギー
インフレ全体の見通しも重要だが、CPIの内訳を丁寧に見てゆくことも大切である。
まずはエネルギーだが、上昇率は13.0%となり、前回の17.6%から減速となった。エネルギー価格の落ち着きは明らかにインフレ減速に大きく寄与している。
理由は明らかに原油価格の下落である。原油価格のチャートは以下のようになっている。
チャートを見れば、エネルギーのインフレ減速への寄与は今後も続くことが分かる。但し、原油価格については今の下落が人工的なものだというポジャール氏の指摘も頭に入れておきたい。
住宅は緩やかな減速続く
エネルギーが減速していることは誰もが予想していたことだが、住宅はどうか?
住宅は7.8%の上昇率となり、前回の7.9%から僅かに減速した。
チャートを見ると9月のピークを頂点に緩やかな減速が続いていることが分かる。
住宅価格自体は6月にピークとなっていたが、CPIへの反映は遅れることになる。
だが住宅価格自体が最大20%以上の上昇率となったことを考えると、CPIの住宅項目が8%のインフレで終わるのは異様である。CPIの住宅項目はどうやら壊れているようだと言わざるを得ない。詳細は以下のラリー・サマーズ氏の議論を参照してもらいたい。
サービスは加速続く
さて、エネルギーと住宅は減速となっていたが、最後の砦はサービスである。何故ならばサービスのインフレは賃金インフレに依存し、労働市場は中央銀行の引き締めが一番届きにくいからである。
今回サービス(エネルギー関連除く)の上昇率は6.82%となり、前回の6.75%からやや加速した。
サービスが本当にインフレの最後の砦である。これで雇用統計の重要性が増したと言えるだろう。だが伸び率もそれほどではなく、加速はどれだけ保つだろうか。
結論
結果はインフレ急減速であり、金融市場では利上げ停止を見込んで当然ドルが急落している。
インフレ率がどれだけ下がるかということについては専門家でも意見が分かれていたが、一番弱気派だったジェフリー・ガンドラック氏の勝利と言うべきだろう。
しかも原油価格チャートを考えると、前年同月比のインフレ率はこれからもかなり下がると予想せざるを得ない。比較対象となる1年前の価格がこれから急上昇するからである。
ポートフォリオを調整する必要があるかもしれないが、その時には別途記事を書くことにする。
やはりドルはピークを超えたと言わざるを得ない。2023年はドル安の年となる。
ゴールドは本当に丁度良いタイミングで買ったものだ。