ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたことで有名な投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏がCNBCのインタビューで、今後の金融政策とビットコインなどの暗号通貨の先行きについて語っている。
ドラッケンミラー氏のビットコインポジション
著名投資家へのインタビューではビットコインなど暗号通貨に関する意見を聞くのがもはや通例となっているが、ドラッケンミラー氏は以前ビットコインを買ったことを公表しており、今でも持っているのかと聞かれて次のように答えている。
今はビットコインは保有していない。
ちなみにビットコインのチャートは次のようになっている。
ドラッケンミラー氏がビットコイン保有を明らかにしていたのは去年の2月である。
つまり下落相場の開始前であり、そこからドラッケンミラー氏の意見は変わったことになる。
ドラッケンミラー氏は何故ビットコインを売却したのだろうか? 彼は次のように語っている。
わたしにとっては、中央銀行が引き締めをしている状況で暗号通貨を保有するのは難しい。
単純明快な理由である。金融緩和に乗って暴騰してきたビットコイン相場なのだから、Fed(連邦準備制度)が緩和から引き締めに転じたところが売り時である。
去年2月の記事の記事でもドラッケンミラー氏は次のように言っていた。
中央銀行の緩和がなければこのような状況にはなっていなかったということは言える。
その後、ドラッケンミラー氏はFedの金融引き締めが金融市場に及ぼす影響を予想し、今年は株式と債券を両方空売りしていた。ビットコインを売っていたのも当然だろう。
ビットコイン相場の今後
では暗号通貨は長期的にも下落相場を継続するのだろうか? ドラッケンミラー氏は次のように予想する。
だが世界経済の状況が本当に悪くなり、今後2年か3年でイングランド銀行がやったようなことを他の中央銀行もやる事態に陥るなら、人々が中央銀行を信用しなくなり暗号通貨が再び栄える状況も想像できる。
イギリスでは9月に首相に就任したリズ・トラス氏が発表したGDPの10%以上に登るばら撒き政策によって英国債が暴落し、イングランド銀行が緊急の国債買い入れを強いられる事態に陥った。
トラス氏は結局2ヶ月足らずで辞任することになる。しかし恐らく問題はイギリスだけの話ではないはずだ。
日本を含む様々な国でばら撒きに対する欲求は高まっており、それが自分を破滅させるものであることが明らかであるにもかかわらず、そこに飛び込まずにはいられないのである。飛んで火に入る夏の虫である。
だがコロナ後のばら撒き政策が引き起こした世界的なインフレの結果、2023年にほとんどの国が景気後退入りすることがほぼ確実であるような現状で、まだ経済がそれほど悪化していない今でもそういう欲求が強いということに着目したい。
これが実際に景気が悪化し失業率が高くなればどうなるだろうか? 間違いなく巨額のばら撒き政策に手を出し国債や通貨を暴落させる第2、第3のイギリスがいくつも出てくるだろう。
結論
そうなれば厳しい引き締め環境は撤回され、ビットコインなどの暗号通貨は暴騰するだろう。それがドラッケンミラー氏の予想である。著名投資家のポール・チューダー・ジョーンズ氏も同じシナリオに言及していた。
だが一方で、暗号通貨がこれからの見通しの良い金相場に連動するのか、あるいはこれからの見通しの悪い株式市場に連動するのかという難しい問題もある。筆者は結局ゴールドで満足するかもしれないが、引き続き暗号通貨のレビューは継続したい。