チューダー・ジョーンズ氏: 利上げ停止でインフレ相場再開、ビットコイン暴騰へ

引き続きCNBCによるポール・チューダー・ジョーンズ氏のインタビューである。

利上げ相場の終わり

1987年のブラックマンデーを予想したことで有名なジョーンズ氏だが、前回の記事では株価の反発よりも前に2年物国債の金利が下がり始めるということを指摘していた。

2年物国債の金利は市場の今後の利上げ予想を織り込んで推移する。インフレはまだ止まっておらず、市場は次々に利上げを織り込んできたので、前回の記事で説明した通り2年物国債の金利はまだ上昇トレンドにある。

だがアメリカのインフレ率がもう半年も8%台で横ばいになっており、原油価格などの下落トレンドがこれからもCPI(消費者物価指数)に織り込まれてゆくと考えれば、利上げの天井は見えていると言える。

そして2年物国債の金利が反転すれば、市場はこれまでの金融引き締め相場から次の段階へと一歩近づく。

これまでの引き締め相場では、あらゆるものが売られてきた。まず第一に金利が上がり(金利上昇は債券価格低下を意味している)、それに伴って株価が下落し、ここ2年間インフレに先立って上昇し続けてきたエネルギー資源や農作物などのコモディティ銘柄が下落してきた。

だがこの下落相場は金利の上昇を前提とした動きである。2年物国債の金利がピークを迎えれば、それは新しい段階への入り口となるだろう。

短期金利が下がるとき

短期金利が下がるまでは株価は上がらないと指摘したジョーンズ氏だが、では短期金利が実際に下がり始めると相場では何が起こるのか。ジョーンズ氏は次のように述べている。

景気後退が始まれば、そしてFedが利上げを止めれば、恐らくこれまで大きく叩き売られたインフレトレードが広範囲に上昇することになるだろう。そしてそれは暗号通貨を含む。

インフレトレードと言われて真っ先に思い浮かぶのはゴールドだろう。筆者は最近ゴールドの買いを再開したが、金価格はこれほどのインフレにもかかわらず、現在コロナ前の水準まで売り込まれている。

そしてジョーンズ氏は暗号通貨にも言及している。

暗号通貨、特にビットコインやイーサリアムのように数量が限られているものはいつかのタイミングで価値を持つことになる。

これまで行われていた莫大な紙幣印刷で暴騰してきた暗号通貨だが、金融引き締めで市場から資金が引き揚げられ始めると株式やゴールドと同じように暴落している。ビットコインのチャートは次のようになっている。

だがジョーンズ氏によれば、利上げ相場が終われば暗号通貨も大幅な上昇相場に入るという。

インフレ相場再開はいつか

インフレ相場再開はいつか。ジョーンズ氏は景気後退のタイミングがそれを示唆すると述べている。彼は次のように言っている。

景気後退が今始まったのか、2ヶ月前に始まったのか、それは分からない。景気後退の開始がいつかということについてはいつも後から驚かされることになる。

失業率の低さを考えれば、まだ始まっていない可能性も高い。

アメリカの失業率は3.5%という低い水準にある。

賃金高騰はインフレの大きな原因となっており、経済学者のラリー・サマーズ氏は失業率が大幅上昇しなければインフレは収まらないと言っている。

ジョーンズ氏はこう続ける。

恐らく現在から1ヶ月あるいは2ヶ月以内の時点に景気後退が始まったということが後になって宣言されるだろう。失業率の低さを考えるとそれより早くなることは考えがたい。

その頃にはインフレ率がピークを迎えていることも明らかになっているだろうから、2年物国債の金利も下がり始めるということである。

結論

ちなみにジョーンズ氏は「インフレトレード」に株式が含まれるかどうかを明言していない。筆者の考えは前回の記事で述べておいたが、どうなるだろうか。

いずれにせよ筆者の今のポジションは株式の空売りとゴールドの買いの組み合わせである。

また、インフレトレードについてはリーマンショックを予想したジョン・ポールソン氏も最近同じようなことを言っていた。

中央銀行が最後まで金利を上げ、実体経済が沈み、そして利上げが終わるとき、金相場はそれに対して反応することになるだろう。そして中央銀行がインフレをコントロール出来ないということが明らかになる。

筆者も含め、そろそろ皆同じようなことを考え始めているということである。