テキサス州、ESG投資を推進する金融機関に経済制裁

いわゆるグリーンな世界に対抗するのろしがテキサス州から上がったようだ。

アメリカのテキサス州は今週、「エネルギー企業を排除している金融機関のリスト」を発表した。このリストにはUBS、クレディスイスなどの銀行やBlackRockなどの資産運用会社が含まれ、これらの金融機関はテキサス州政府との契約締結を制限されることになる。

ESG投資

恐らく多くの人々にはそもそも「エネルギー企業を排除」とは何のことであるかを説明する必要があるだろう。

いわゆるESG投資については聞いたことがあるかもしれないが、これは投資をする際にいわゆる「グリーン」でない、つまり環境に優しくない(と一部の人々が主張する)企業には投資をしないようにしようというリベラル派の人々によるお達しである。

このESG投資は金融機関に対する規制当局によってまず大手金融機関に押し付けられ、また税金を使った広報活動によって一般にも周知されたのでESGという単語を聞いたことのある人も多いだろう。

いわゆる脱炭素政策の一環なのだが、このESG投資によって原油や石炭、天然ガスなどを採掘する企業が融資を受けられなくなる憂き目にあっていることは一般にはあまり知られていない。原油企業などに投資をする投資家は「グリーンでない」とされ、ウクライナ問題でもお馴染みの西洋社会における同調圧力を受けることになる。

投資や融資を受けられなくなった採掘企業はエネルギー資源が採掘できなくなる。

このように、ここでは何度も書いているが、脱炭素政策とは単に太陽光発電や風力発電を推進する政策ではなく、ESGなどを通して原油などの採掘を強制的に減らそうとする政策である。

そしてESGが原油などの採掘を減らした結果どうなったかと言えば、原油が足りなくなりエネルギー価格が高騰した。

グリーンな人々の多いヨーロッパでは脱炭素を特に強行したために厳しい状況となっており、スペインなどでは真夏や真冬に冷暖房を使えない事態に陥っている。

ESGへの初めての政治的反抗

自分でエネルギー源を減らして自分で苦しんでいるのだから世話のない話である。Bridgewaterのレイ・ダリオ氏を含め、こういう馬鹿げた状態をまともな金融家は皆憂慮していた。

だがこうした憂慮はあくまで、考える頭のある個人が意見表明するレベルに留まっていた。一方でESGは政治家主導の政治的潮流である。

相場でもそうだが、まともな意見が主流派になることはない。それでグリーンな人々は世界中にエネルギー価格高騰を撒き散らしながら好き放題やってきた。

だがここに来てアメリカのエネルギー産業の牙城であるテキサス州から反撃ののろしが上がった。今回の金融機関のリストはそういうことである。テキサス州の会計監査官であるヘガー氏は次のように述べている。

ESGのムーブメントは不透明で屈折したシステムを産み出した。一部の金融機関はもはや株主や顧客の最大利益のための意思決定をせず、秘密に覆われた社会的・政治的なアジェンダのために金融における権力を行使している。

この企業はグリーンだから良い、この企業はグリーンでないから悪い、それを誰が決めるのだろうか? 脱炭素政策もまた独裁政治的である。

また、奇しくも反ESGに立ち上がったのはテキサスだけではない。これとは別にフロリダ州が、州の基金を運用するファンドマネージャーに、経済とは無関係のESG的な要素を投資先決定の際に考慮することを禁止した。つまり、これまで推進されていたESG投資を逆に禁止したということである。

またもや始まる反リベラルのトレンド

この流れを見て何かと似ていると感じた読者は居ないだろうか。筆者が思い出したのはヨーロッパの移民危機である。

これもリベラル派の政策から始まった。欧米自身が引き起こしたシリア難民の窮地を救うという何ともご立派な名目で、シリアとは何の関係もない多くの中東移民がヨーロッパに集まった。彼らには衣食住が保証されていると喧伝され、実際に用意されていたのは言葉も文化も違う異国での孤独な生活だった。

結果としてヨーロッパ市民は移民による性的暴行にさらされたり、テロで殺されたりした一方、移民の側も多くがヨーロッパに向かう間の地中海で溺れ死んだ。彼らもリベラル派の人々がいなければ溺れ死ぬことはなかっただろう。

この政策は一体誰の得になるのか? 少なくとも筆者はそう思っていたが、政治的に推進された移民危機は続いた。その後イギリスのEU離脱やトランプ大統領の当選などを受け、移民政策は少なくとも以前のような馬鹿げた状態ではなくなったが、この件に関してリベラル派が謝ったところを見たことがない。彼らは絶対に反省しない。

そしてこの脱炭素の件は完全なデジャヴュである。利権に支えられた政治家と、その政治家やメディアに騙されたリベラルの人々がインフレを引き起こす。それは一定期間続くが、流石に耐えられなくなった非リベラルの人々から反撃ののろしが上がり始める。

結論

だからこのニュースはテキサスとフロリダの地域ニュースではなく、これからグローバルに始まってゆく反脱炭素の最初のトレンドだろう。

そして何度も言っているが、脱炭素も移民危機もウクライナも、西洋文明の終わりを飾る非常に大きなトレンドの一部なのである。

筆者はこれを西洋文明の長期自殺トレンドと呼んでいる。彼らは意味不明の政治的潮流のために資源と人命を浪費し、最後には自滅してゆく。

バッタも食べなければならなくなるだろう。

この長期トレンドを眺めながら投資家には何が出来るか。とりあえずはユーロスイスフランの空売りだろう。これについては以下の記事に書いているので参考にしてもらいたい。