引き続きDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回は利上げと金利水準について語った部分を取り上げたい。
アメリカの中立金利
前回の記事でもそうだったが、今回ガンドラック氏はパウエル議長のことを褒めている。彼は次のように言っている。
会見ではパウエル氏はいくつかの事項についてかなり正確な認識を示した。それを褒めたいと思う。
第一に、彼は基本的に2.5%が中立金利だと認識していると言った。
これはなかなか面白い発言だ。何故ならば、ガンドラック氏は2.5%を実体経済にとって高すぎず低すぎない中立金利だと考えているということだからである。
2.5%の金利は十分か
根拠は何だろうか? ガンドラック氏は次のように続けている。
Fedが利上げを始める前、わたしはFedは2年物国債の金利上昇に従って利上げすべきだと言った。
去年、パウエル氏がまだ「インフレは一時的」と言い張ってゼロ金利を維持していた頃、市場ではFedがいずれ利上げをしなければならなくなるとの予想から2年物国債の金利が先に上昇していた。
ガンドラック氏は市場の方が正しいとして、Fedは利上げで追いつく必要があると主張してきた。その後、2年物国債の金利と政策金利を並べたチャートは次のようになっている。
ガンドラック氏は次のように言っている。
この6週間で2年物国債の金利は0.5%下がった。一方で政策金利は1.5%上がった。だから差は2%縮まった。Fedはもう市場に遅れを取っていない。
これは恐らく市場の急落が落ち着いてきた理由だ。
最近反発した株価については前回の記事が参考になるだろう。
ここからは急激な利上げはない
何故株価が落ち着いたかと言えば、2年物国債はここから急激な利上げがないことを示しているからだ。
そしてこれまで物価高騰の脅威を警告し続けてきたガンドラック氏が、それは良いことだと考えている。彼は次のように言う。
次に景気後退が来るとき、それは大きなものになるだろう。それはFedにとって避けたいものだが、何故避けたいかと言えば、そうなれば紙幣印刷をもう一度行わなければならなくなるからだ。Fedもそれを分かっていると思う。
だから皮肉なことに、インフレ率を長期で低く抑えたければ、金融引き締めをやり過ぎて深い景気後退を招くことを避けなければならない。
ガンドラック氏は、明らかに景気後退後に紙幣印刷に逆戻りすることによるインフレ第2波を気にしている。それは筆者が去年から主張し続け、経済学者のラリー・サマーズ氏がその後に同調したシナリオである。
それは1970年代に実際に起きたことである。当時のインフレ率のチャートを再掲しよう。
インフレ第2波は恐らく避けようのないものだが、問題はインフレの山と谷を出来るだけ小さくできるかということだろう。
ガンドラック氏はそのためにこれ以上急激に利上げしてはならないと言っている。
一方、サマーズ氏は直近のインタビューで、この水準が中立金利であるわけがないと強調している。
珍しくガンドラック氏とサマーズ氏の意見が真っ向から対立している。今の金利水準でインフレは収まるのだろうか? サマーズ氏のインタビューもすぐに取り上げたいと思っているので、楽しみにしてもらいたい。