金価格の上昇が止まらない。2016年1月からの世界同時株安を受け、米国が利上げできなくなる観測が市場を支配し始めたことで、米国の金融引き締めを織り込んで暴落していた金価格が急反発している。金価格の見通しを書いた記事で述べたシナリオ通りであり、個人的なトレードとしても恐らくは数年に一度の大成功である。
まだ分からないが、もしここが2016年の底値となれば、2011年以来の大暴落の底値をピンポイントで買いに行ったことになる。今回の金のトレードについてはほぼリアルタイムで報告し続けたので、商品市場の大底をどのようにして掴みに行くのか、読者には分かりやすいデモンストレーションとなったことだろう。
- 2016年金価格の推移予想: 金は暴騰するがいつ買うべきか? 利上げの影響と米国経済の動向(2015年12月26日)
- ジム・ロジャーズ氏: 世界同時株安でもドルは上がり、金価格は1,000ドル以下に下落する(2016年1月25日)
- 金買い増し: 2016年、アメリカ経済減速で通貨切り下げ競争が激化する(2016年2月2日)
以上の3つが金の買いを報告した記事である。ジム・ロジャーズ氏は底値はまだだと言っていたが、現状ではわたしのほうが正しかったと言える。
買いの量について言えば全体の50%は12月の時点で購入していた。どのように予測できたかについてはそれぞれの記事を参照してもらいたい。
これからどうなるか?
問題はこれからどうなるかである。長期で見れば、1200ドルはまだまだ安値であり、米国が利下げに戻れば1500ドル、量的緩和再開を余儀なくされれば2000ドルまで上がると予想しているが、短期的な見通しについても述べておこう。
金価格が直接反応するのは米国の金利先物市場と長期金利であるが、それらを動かすのはアメリカ経済の減速のペースと、世界同時株安が何処まで進むかである。株安が進めばFed(連邦準備制度)は利上げが出来なくなるからである。
株安に中銀がどう対応してゆくかであるが、先ず、ECB(欧州中央銀行)は12月に、日銀は1月に動いているので、立て続けに動くことは難しいだろう。そもそも前回の緩和が効かなかったのだから、更に緩和したところで株安が止まるかは疑わしい。
そうだとすれば、当局側に残された手段はFedの利上げ撤回である。米国は利上げを進めたいのだが、このまま株安が続けば利上げを撤回せざるを得なくなる。この場合は金価格は更なる高値へと向かい、われわれにはプラスのシナリオである。
もう一つの株高シナリオ
しかしながら、株高にはもう一つのシナリオがある。暴落している原油価格の反発である。
米国の株安については原油価格の暴落が寄与している部分が大きく、したがって原油価格が反発すれば、株式も反発する可能性がある。米国株が反発すれば利上げの可能性が高まり、金が下落するわけである。株安に影響を与えている指標は以下の記事で纏めたが、原油安は中でも影響が大きいものである。
これまでも書いている通り、個人的には原油の底値はまだ来ていないと考えている。シェール企業の資金が底をつくまではまだ時間がかかると想定しているが、原油の底値は遠からず訪れることになり、その際に株式が上昇し金が下落する可能性があるのである。
だからこそ、金の投資家にとっても原油価格の予測は重要なのであり、底値付近で優れたエネルギー関連企業を買い、原油反発リスクをヘッジしておかなければ、原油反発時に金下落の損失のみを受け入れることになってしまう。利上げはもし可能だとしてもあと数回であり、金は下げても一時的な買い場となるだけだが、短期的なポートフォリオへの悪影響であっても、避けられるなら避けたほうが良いだろう。
シェール企業の決算が2月後半に発表される。下落した原油価格でどれだけ利益を上げられているのか、そして資金がどれだけなくなっているのかが明らかになるだろう。
現在、わたしは原油そのものには投資していない。それでも金の投資家にとっても、株式の投資家にとっても、原油価格の見通しは非常に重要なのである。