債券の専門家であるジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで、今週のFed(連邦準備制度)のFOMC会合結果にコメントしている。
急激な利上げ
5月のFOMC会合では、中央銀行は通常の2回分である0.5%の利上げと、2018年の世界同時株安を引き起こした2倍の規模の量的引き締め開始を発表した。
一方、パウエル議長は会合後の記者会見で、市場で噂されている0.75%の利上げを「積極的には考えていない」とした。
ガンドラック氏は0.75%利上げを否定した部分を評価しているようだ。彼は0.75%の急激な利上げをアニメのキャラクターである「近眼のマグー」に例えてこう言っている。
それは近眼のマグーと彼の車のようだ。近眼のマグーはドライブに行くが、近眼なのでよく見えない。彼は何かにぶつかって初めて、彼がいつ何かにぶつかるのかを知る。
これは以前からガンドラック氏が主張していることである。
中央銀行は経済にプラスにもマイナスにもならない、いわゆる「中立の金利」を目指して利上げを行う。
だが問題は、中立の金利を明確に示してくれるものさしは存在しないということだ。だから中央銀行は仮に中立水準を越えて利上げしたとしても自分で気付くことが出来ない。
中央銀行は見えない中を進み続ける近眼のマグーのようなものだということである。
ガンドラック氏はこう続ける。
市場は近眼のマグーが加速を始めているのではないかと心配していた。それが0.75%利上げだ。そのスピードでは年内の景気後退不安を引き起こしてもおかしくはない。
では近眼のマグーこと中央銀行はどうすれば中立水準を超えたことに気付くのか? 実体経済か株価に問題が生じたときである。
つまり、利上げは株価が暴落し景気後退が起こるまで止まらない。それが2018年に起こったことである。
利上げという行為はそもそも詰んでいるのである。ではどうすれば良いかについては、ガンドラック氏は以下の記事で説明している。
中央銀行を信じない金融市場
それでガンドラック氏は0.75%利上げを否定したパウエル議長を評価した。
だが問題は、パウエル議長の否定を市場は信じていないということである。金利先物市場の6月の利上げ織り込みは、FOMC直後から更に更新されて次のようになっている。
- 0.75%利上げ: 87.1%
- 0.5%利上げ: 12.9%
0.75%利上げの確率が増し、ほぼ既定路線となっている。それで米国株はFOMC後の上げ幅を一気に失ったわけである。
結論
FOMC直後に株が上がったとき、ここでは次のように書いておいた。
値動きの激しい下げ相場においては短期的な上下は意味をなさない。下げ相場では短期的に見れば「反発か」と思えるような激しいリバウンドがいくつも見られる。
しかし下げ相場とはそういうものである。大幅に上がり、大幅に下がり、それを繰り返しながら長期的には大幅に下がってゆくだろう。
上下動に一喜一憂している投資家が居るとすれば、その人はすでに下げ相場に飲まれている。落ち着いて長期トレンドを考えることである。