アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、ウクライナ危機後のロシアについて面白いことを語っている。
ウクライナ危機後の対ロシア制裁
サマーズ氏はロシア経済の現状について次のように語っている。
ロシアは今や戦争前よりも多くの収入を得ている。そしてロシアの通貨ルーブルは強くなっている。何故ならば、ヨーロッパの国々がロシアから原油を大規模に輸入し続けているからだ。
ロシアのウクライナ侵攻以後、日本を含む西側諸国はロシアに対して制裁を課した。ロシアの中央銀行が国外に保有する資産は凍結され、ロシアの銀行の一部は国債決済網であるSWIFTから排除、アメリカなどはロシア産のエネルギー資源の禁輸を発表した。
また、「アメリカにあるプーチン大統領の銀行口座」なる存在するわけがないものも凍結されている。
ロシアのものであれば架空のものでさえ取り締まってゆこうというスタンスである。
さて、これらはロシアを国際経済から徹底的に排除し、デフォルトに追い込もうとする試みだった。結果としてロシアルーブルは一時暴落していた。
しかしその後どうなったか? ドルルーブルのチャート(上方向がドル高ルーブル安)は次のように推移している。
西側の経済制裁が万能だと信じ、国際経済から締め出されたらロシアは終わりだと信じていた多くの日本人のバイアスは、むしろアメリカのお守り(皮肉にもそれが架空であることをウクライナが証明している)がなければ国際社会で生きていけないという自己の間違った西側依存をさらけ出したものだったのではないか。
筆者は戦争勃発直後に次のように書いている。
ロシアの主要輸出品であるエネルギー資源の価格はウクライナ情勢のために高騰しており、この状況でロシア経済が消えてなくなることは有り得そうにない。
これがバイアスのない目で見た事実である。そして市場はそれを織り込んだ。
ロシア経済を援助する対露制裁
だが興味深いのはそれだけではない。実際には対露制裁がロシアの収入増加を手助けしている。
何故ならば、アメリカやヨーロッパが表向きはロシアの資源を締め出すと宣言したことで、原油価格や小麦価格などが高騰しているからである。
しかしその一方で、ヨーロッパは実際には天然ガスの輸入を続けている。ヨーロッパ人は脱炭素政策という宗教にのめり込み、原油の使用量を激減させた上で、ドイツなどは福島以降原子力発電を否定している。
だがそれらのエネルギー量を供給が不安定な太陽光発電や風力発電で補えるわけがない。結果としてロシア産の天然ガスへの依存が大きくなり、禁輸すればただでさえインフレになっているヨーロッパで、電力価格は人々が本当に生活できないレベルまで上がってゆくだろう。
だからヨーロッパは、表向きに禁輸するという姿勢を見せながら輸入を続けるという選択肢を取らざるを得ない。だがこの行動は、わざわざロシアの輸出品の価格を上げてから輸入するような行為に他ならないのである。実はヨーロッパ人はロシアが好きなのではないか。親切なことである。
結論
西側諸国はどんどん自滅してゆく。中東の人々をタダ飯でそそのかしてヨーロッパ入りさせようとし、多くを地中海で溺死させた上で、辿り着いた移民はヨーロッパで婦女暴行を働いたこともそうであれば、脱炭素政策で自分のエネルギーの供給源を自分で断ち始めたこともそうであれば、ウクライナをけしかけてロシアとの戦争に追い込み、自国民に不必要な物価高騰をもたらしながらロシアに儲けさせていることもそうである。
筆者はこれを西洋の長期自殺トレンドと呼んでいる。そして「西洋」には西側諸国の愚かな政策に無批判に従う日本も含まれている。ウクライナは始まりに過ぎない。その結果は本当に酷いことになるだろう。