サマーズ氏: 中央銀行と市場はインフレを過小評価、政策金利は2.5%以上まで上がる

アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューでインフレと今年の金融市場の見通しについて語っている。

利上げ織り込みは不十分

ここの読者には去年からずっと明らかだった話だが、2022年は市場も経済も暗雲だらけである。

しかし問題がもう1つある。サマーズ氏によれば、暗雲はまだ十分に織り込まれていないということである。彼は次のように述べる。

Fedと市場はこれから必要になるであろうことをまだきちんと認識していない。Fedと市場の想定は、政策金利が2.5%より上に上がらなくてもインフレが何とか収まるというものだ。

アメリカではインフレは止まらない状況となっており、市場は今年中に3回か4回の利上げを想定している。しかし考えてみてもらいたいのだが、それはこれから半年経過した時点で政策金利は0.5%程度までしか上がっていないということだ。

それでインフレが止まるだろうか? 今のアメリカのインフレ率は6%以上である。0.5%程度の金利では消火出来ないことは明らかであるどころか、これほどのインフレの中でむしろ低金利を継続している状態となり、本当に市場の想定通りに今年の前半が進めばインフレ率は更に上昇する可能性が高い。

6%のインフレとは、0.5%の金利で借金してものを買えば6%価格上昇し、5.5%儲かるということである。誰でも借金してものを買うだろう。それが今の数回の利上げという「金融緩和」の状態である。

このままではインフレは治まらないだろう。しかし市場もFedも少し考えれば誰でも分かる現実を織り込んでいない。サマーズ氏は次のように続ける。

市場やFedの想定が的中する可能性はあまりない。あるいは、彼らの想定が唯一的中するシナリオは少しの利上げで経済が崩れてデフレになる場合で、どちらにしても問題が生じる。

アメリカ経済はもう詰んでいるのである。

物価高騰か株価暴落か

実際にはどちらのシナリオになるだろうか。サマーズ氏は次のように説明する。

利上げに対して経済がどれほど脆弱かはじきに明らかになるだろう。

利上げに対する脆弱さがこれまでと同じ程度であれば、2%程度の金利水準でインフレを制御できると考えるのはまったく現実的ではない。

一方で一部の人が主張するように積み上がった負債や高騰した資産価格のために経済が金融引き締めに対してこれまでより脆弱であれば、インフレを制御しながら経済を傷つけないことは簡単ではない。

恐らく実際には、金利をある程度上げたところで市場や経済が動揺するというケースになるのだろう。サマーズ氏は次のように述べている。

Fedにとっての困難は、現在の劇的なインフレが落ち着くよりも先に市場の下落や景気後退の懸念を目にするだろうことだ。

明らかに、利上げを続けてゆくとインフレが落ち着くより先に市場や経済が動揺を始めるだろう。それでFedは利上げを続けるのか、市場に配慮して利上げを止めるのかを決めなければならなくなる。

結論

筆者の意見では、今市場があまり織り込んでいないのは今後半年間のインフレ加速の可能性である。

市場は前々から分かっていた利上げの必要性に動揺しているが、今の利上げペースではインフレを抑えられるどころか、利上げのペースが本当にあと半年で2回程度ならば半年後にはインフレ率はかなり上がっているだろう。しかしコモディティ市場は必ずしもその方向には反応していないか、一部の銘柄はむしろ下がっている。

しかし繰り返しになるが、インフレか市場暴落か、市場暴落ならばそれがいつかの当て物をするのは賢明な投資方法ではないだろう。はっきりと分かっているのは、インフレ率を差し引いた経済成長と資産価格が下がるだろうということである。インフレになるにせよ、市場暴落でデフレになるにせよ、実質的な成長率はどのビジネスも駄目だということである。

こうした状況で投資する方法はいくつかある。一番分かりやすいのは以下の記事を含め何度も説明している米国債のトレードである。

しかしその他にもやりようはあるので、それについてもまた記事を書いて説明したいと思っている。とりあえず、株を買っている人にはジャンク債の空売りが良いヘッジになるだろうし、事実そうなっている。そちらもまた読んでおいてもらいたい。