あらゆる状況証拠が追加緩和は無いと言っているのだが、少なからぬ市場参加者が追加緩和を期待しているようである。
先ず円がじわりと上がってきている。これはドル高ではなく円安である。ユーロ円なども似た動きをしているからである。
個人的には今月の追加緩和など有り得ないと思っているので、市場の楽観主義にやや当惑している。追加緩和がないと考える理由についてもう一度纏めておこう。
先ず第一に、追加緩和の余地は限られており、もう一度追加緩和をするとその余地は更に狭くなる。米国の利上げの前に追加緩和をしてしまえば、利上げ後に市場が急落した際に手の打ちようがなくなる。
第二に、2017年の10%への消費増税を行った時に、追加緩和が必要となる可能性が高い。消費増税で日本の経済はゼロ成長に戻ってしまった。
これは財政出動になるかもしれないが、少なくとも追加緩和の必要性が高いのは今よりも2017年前後である。
第三に、第一回の追加緩和を主導した財務省が更なる追加緩和を望んでいない。国債は現在、財務省の目指す財政ファイナンスに十分な量買い入れられており、またこれ以上の増額は望みがたい。次の追加緩和は株式ETFやREITとなる可能性が高く、財務省はその損失埋め合わせのリスクを嫌っている。
以上である。投資家の希望的観測以外に、何か追加緩和を期待する合理的理由があるだろうか? 市場は偶にこういう理解しがたい動きをする。
したがって、10月30日の日銀決定会合までにドル円が上がり続けるとすれば、噂で買って事実で売る相場となるのではないか。
円についてはこれまで述べてきた通り長期の売りである。日銀は量的緩和を辞められず、政府債務を考えれば増税による景気へのマイナス圧力は避けられない。
しかし追加緩和は今年中にはないだろう。ドル円は今後長らくレンジ相場を続けたのち、日銀の量的緩和が辞められないと気づいたときに、以前のように一気に上がるのではないか。当分は売りを続けながらもオプションを売って、レンジ相場で利益を稼ぐしかない。しかしドルには以下の記事で述べた利上げ延期リスクがあるので、ポンド円など別の通貨にも分散して円売りをすべきだろう。