さて注目のインフレ率である。アメリカの最新のCPI(消費者物価指数)のデータが公表され、11月分は9.8%(前月比年率、以下同じ)の物価上昇となり、10月の11.9%からは減速したものの依然としてかなり高い水準を維持している。
止まらないアメリカの高インフレ
インフレ率のチャートは次のようになっている。
直近、インフレ率の山は4月から6月までと、10月から11月までの2回来ている。
1回目の山は明白にアメリカで行われた3回目の現金給付が原因である。しかし2回目の山の理由は何だろうか。
理由の1つとしてはアメリカで夏に来ていたコロナの波が10月には収まったことが挙げられるだろう。これが理由であれば感染が再び増えている12月のインフレ率は今回よりもう少し減速した数字になるはずだが、逆に言えばコロナがなければインフレはこれほど高い数字になるということだ。
もう1つの考えられる理由は人々がインフレを気にし始めたということである。事実、アメリカの有権者が政府に求める項目の中でインフレ対策が急上昇しており、バイデン大統領はFed(連邦準備制度)のパウエル議長の再任にあたってインフレを抑制するよう釘を差した。それでパウエル氏もようやくインフレから目をそらすのを止め始めている。
来年の物価上昇を恐れて人々がものを買い始めたとすれば、アメリカ経済はインフレがインフレを押し上げる自己強化プロセスに入ったということである。こうなればインフレはなかなか止まらなくなる。
不動産とエネルギー価格の高騰
それを一番よく示しているのは不動産価格の高騰だろう。不動産は「価格が上がるから買う」という買い方の最たるものだからである。
CPIの要素の中で家主が自分の家に家賃を払ったと仮定して算出する「家主のみなし家賃」は不動産価格の上昇を反映する項目であり、11月の価格上昇は5.4%で、前月の5.4%からほぼ横ばいとなっている。
高止まりするCPI全体のインフレ率を明らかに支えていると言える。
また、消費者が一番懸念しているのがエネルギー価格のインフレである。エネルギー価格のインフレ率は50.6%となり、前月の74.9%から下がったものの依然高い水準である。
この数字は前月比年率であり、1月の上昇率が1年間続けばそのインフレ率になるという数字だが、それでもやはりエネルギー価格は上がっている。日本も遠からずそうなるだろう。
原因は明らかに化石燃料の供給を無理矢理制限する脱炭素政策によって原油価格や天然ガス価格が高騰していることであり、日本を含め対策として購入に給付金を出す馬鹿な国も出てきていることが明らかに火に油を注いでいる。
金をばら撒いたら当然ながら価格は上昇する。いまだにこれを理解できない人がいるようである。
脱炭素を特に強行したヨーロッパでは冬に暖房を使うことが難しくなりつつある。一番良い解決策は脱炭素を推進したリベラル派の人々が暖房を使うのを一切止めることだが、彼らはまったく責任を取らないだろう。苦しむのは他人を犠牲にして偽善者ぶろうとした彼らではなく、脱炭素とは関係のない貧しい人々である。
結論
2022年の利上げが加速することは不可避だろう。現金給付を行うと決めた瞬間から分かっていた当たり前の結末である。そして政治家と有権者はいまだにこの病に取り憑かれている。彼らは行くところまで行かなければ理解しないのである。
投資家としては淡々と準備を進めるだけだろう。