予想通りの展開である。Fed(連邦準備制度)のパウエル議長は火曜日の議会証言で11月にスタートしたテーパリング(量的緩和縮小)を加速させることを示唆した。
ついに「一時的」ではなくなったインフレ
読者には周知の通り、アメリカのインフレがかなりの水準に達しても、パウエル議長が「インフレは一時的」だと言い張り続ける状態が長期間続いていた(文章自体が矛盾である)が、いよいよ「一時的」だと言い張ることが出来なくなったらしい。
パウエル氏は議会証言で次のように述べた。
われわれは「一時的」という言葉を高インフレが永続的にならないという意味で使っていたが、恐らくそろそろこの言葉を引退させるのに良いタイミングだと思う。
どうやらパウエル氏にとっては永遠より短い時間はすべて「一時的」らしい。
彼に対して言いたい皮肉は山ほどあるが、どちらにしても筆者やジェフリー・ガンドラック氏ら専門家が主張し続けていた、はっきり言えば去年から分かりきっていたことをパウエル氏がようやく認めた形となる。
何故パウエル氏はFedの議長をやっているのだろうか。読者にもわたしやガンドラック氏の方がまともなことを言っているということが分かるはずである。
筆者を含む投資家たちは、中央銀行の誤りを市場で正すことで報酬を得られるから良いとしても、税金を使って彼らを雇っている国民はそれで良いのだろうか。何の仕事もしていない彼らをクビにするべきではないのか?
しかし人々は政治家が税金を湯水のように私服のために使っても何も言わないし、中央銀行のトップがこのような完全にずさんな仕事をしても何も言わない。もっと搾取して下さいと自分で言っているようなものである。こうした人々は「一時的」にもっと搾取され続けるだろう。
どんどん引き締まる金融政策
さて、インフレに対処すべきだということに気付いた結果、金融政策はどうなるだろうか。パウエル氏は次のように述べている。
経済はとても強く、インフレ圧力は力強いと認識している。よって数週間後にある次の会合でテーパリングを数ヶ月早く完了するのが適切かどうか議論するのが適切だ。
テーパリングは11月に開始が発表され、元々の予定では来年の6月に完了(量的緩和を完全終了)する予定となっている。
これを数ヶ月早めるというのは、パウエル氏より先にウォラー理事など他のメンバーが主張していたことである。
そもそもテーパリング自体、パウエル氏が後ろ向きだったもののインフレを懸念した他のメンバーによって押し切られて開始した経緯がある。これも前から言っているが、パウエル氏はFedをコントロールできていないのである。
パウエル氏は最近任期が終了しバイデン大統領によって再任されたが、その時にバイデン氏からインフレに対処するように釘を刺されている。
パウエル氏がインフレを気にし始めたのはそれからである。そして彼がインフレを無視していたのは、2018年に自分の行なった金融引き締めが世界同時株安に繋がったため、金融引き締めをやりたくなかったのである。
それで金融引き締めをやらずに済むよう何もせずに祈っていたのだが、再任にあたってバイデン氏に釘を刺されたのでやらざるを得なくなった。
つまり、彼の結論は何らインフレとも経済学とも関係がない。投資家ジム・ロジャーズ氏が「中央銀行家は自分の職のことしか気にしていない」と言っていたことが思い出される。それが再任の条件だったからそうしたのである。彼は「一時的」にクビにするべきだろう。
結論
ということで、テーパリングは恐らく来年3月頃には終了するのだろう。投資家にとって重要なのはその後の利上げである。
こうした金融引き締め政策が株式市場に及ぼす影響についてはすでに記事を書いているので、そちらを参考にしてもらいたい。議長がパウエル氏になってから特にそうなのだが、元々分かりきっていたことを何度も書かなければならないのは辛いものがある。