アメリカ経済の先行きを占う個人消費の先行指標となる小売店売上高が発表されたので報じたい。
アメリカ経済の近況
アメリカ経済にはここのところ良いニュースがなかった。一番の懸念は現金給付と脱炭素政策によって引き起こされた物価高騰である。
そしてそれに追い打ちをかけるようにGDPもかなり酷い数字だった。
しかし今回入ってきた実質小売店売上高は悪くない数字だった。成長率は前月比年率で9.3%となり、前月の5.1%から加速した。チャートで見ても加速しているのが確認できる。
小売店売上高は個人消費やGDPよりも早く発表されるため、アメリカ経済の今後をいち早く占うものとして投資家に注目されている。
現金給付後のアメリカ経済
チャートで一度急上昇して降りてきているのは現金給付による一時的なもので、その後消費がどうなるのかが注目されていたが、少なくとも小売店売上高はその後加速しているようである。
この流れが個人消費にも表れてくるのかどうかが焦点となる。個人消費のチャートは9月分までだが以下のようになっている。
GDPなど暗いニュースが多かったアメリカ経済にとってこれは少なくとも良いニュースだが、面白いことに金融市場では良いニュース自体が悪いニュースにもなりうる。何故ならば、インフレに加えて消費も悪くないということになれば、中央銀行は利上げをしない理由が完全になくなってしまうからである。アメリカは量的緩和の縮小を開始しており、その後は利上げということになっている。
利上げは当然ながらリスク資産にはマイナスとなる。
しかしそれでも小売店売上高の数字はリスク資産にとって短期的には悪くないニュースだと言える。インフレがあっても経済成長も悪くないなら、リスク資産はそれなりにやっていける。
一方で本当にこのまま消費が悪くないものになるならば、利上げのペースは断然加速することになるだろう。それはいずれはパウエル議長によって行われた2018年の金融引き締めのように資産バブルを崩壊させるが、それまでの最後の上昇相場を助けるかもしれない。
結論
著名投資家たちの判断は、頭と尻尾はくれてやれ、ということのようだ。崖が見えているのにそこまでは突っ込まないということだろう。
この状況で株式に突っ込むかどうかは別としても、インフレでコモディティ高にどれだけ賭けるべきかを迷っている投資家には朗報かもしれない。中国の不動産バブル崩壊とインフレの両方に賭けておくことが恐らく必要である。