引き続きYahoo! FinanceによるDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。今回は金相場と暗号通貨について語っている部分を紹介する。
アメリカの量的緩和
コロナ以後、アメリカでは強力な量的緩和が続いているが、最近のアメリカにおける物価上昇を受けてFed(連邦準備制度)の委員たちはテーパリング(量的緩和縮小)を考え始めている。
これまで株価を高く保っていた片翼がコロナ禍における現金給付であるとすれば、もう片翼は金融緩和だろう。それが少なくとも緩和縮小されそうである。これについてガンドラック氏は次のように述べている。
Fedがテーパリングを開始するかもしれないという噂がある。
しかし少なくとも量的緩和が行われている間は金利は非常に低い水準に保たれるだろう。CPI(訳注:消費者物価指数)が全体で5.4%、コア4.3%で上昇する中、実質金利は1970年代のジミー・カーターの時代に匹敵するマイナスとなっている。どちらの数字を取るにしても、実質金利は-3%か-4%ということになる。
ガンドラック氏が注目するのは名目金利からインフレ率を引いた実質金利である。金利が名目で高くとも、インフレ率も高ければ、実質金利は低くなる。そして経済に実際に影響を与えるのは実質金利である。
アメリカの実質金利(市場の予想値)は次のように推移している。
実質金利は低く保たれるのか
インフレ懸念でテーパリングだとは言っても、実質金利まで上がるとは限らない。インフレが上がる分だけ金利を上昇させるだけで済めば、実質金利には影響しないということになる。
少なくとも上のチャートを見る限り、状況はまだまだ十分に緩和的である。そしてインフレ率も上がっている。にもかかわらず調子の悪い資産クラスがある。ゴールドである。
ガンドラック氏は金相場について次のように語っている。
金価格は1,800ドルで停滞しているようだ。今われわれが話している現在、価格は丁度1,800ドル近辺だろう。一度2,000ドルまで上がって諦めた。およそ1年前のことだ。そして今、1,750ドルから1,850ドルの間を右往左往している。
金価格は現在次のように推移している。
金価格の停滞については、最近の短期的反発の前の記事だが、その反発の理由も含めて以下の記事で既に説明してある。
しかしガンドラック氏はゴールドが他の資産に需要を吸い取られているのだと言う。ビットコインである。
緩和銘柄ビットコイン
ガンドラック氏はビットコインについて次のように話している。
ビットコインは過激なジェットコースターのような動きをしている。しかし長期的には大きく上昇した資産だ。この動きは政府が現金給付を行なって景気刺激したことが原因だろう。そして現金を受け取った人々は、恐らくゴールドを買うよりもビットコインを買うことになる。
だから景気刺激が暗号通貨の相対的パフォーマンスを決定する要因だ。
ガンドラック氏は以前よりビットコインを市場に注ぎ込まれている資金のバロメーターとして扱っている。ビットコインが上昇している間は市場に資金が溢れており、枯渇し始めるとビットコインが下落するということである。
そしてそのビットコインは次のように推移している。
どうも市場に資金は枯渇していないようだ。4月からのビットコイン急落を的中させたスコット・マイナード氏は、ビットコインは更に下がると言っていたが、これは残念ながら的中していない。
そして最近のビットコイン下落のなか暗躍していたSoros Fund Managementにとっては大きな勝利となったようだ。
両方とも同じ時期の報道である。
結論
金価格とビットコインのチャートを見比べると、ガンドラック氏の言う通りやはりビットコインが勝っているように見える。コロナで落ち込んだ経済を緩和で無理矢理持ち上げる相場においては、ゴールドより暗号通貨が向いているのかもしれない。
一方でガンドラック氏はビットコインを保有しているかどうかを聞かれて、次のように答えている。
持っていない。わたしにはリスキー過ぎる。