アメリカで始まっている物価上昇を懸念し、Fed(連邦準備制度)は利上げとテーパリング(量的緩和縮小)を示唆して対策に乗り出す姿勢を見せたが、長期金利は上昇するどころか急落を続けている。
アメリカの長期金利は以下のように推移している。
金利低下と株式市場
これに対して株式市場はどう反応しているかと言えば、銘柄によってプラスとなったりマイナスとなったりしていることは前回の記事で報じた通りである。
しかし株式市場全体にとってはこの金利低下はプラスなのではないか。金利低下を予想して見事的中させた債券投資家のスコット・マイナード氏は株価下落が金利低下の要因になると言っていたが、現状では株価が下落せずに金利が下がっている。
アメリカの株価指数S&P 500は以下のように推移している。
長期金利と株価の関係
長期金利は株安の時にはリスクオフで債券が買われ、債券価格上昇は金利低下を意味するので金利は下がることになるが、長期金利が先に下がる場合には低金利が株価上昇の要因になる。
現在の金利低下はFedが利上げとテーパリングという株式市場にとって本来ネガティブなことを示唆したことがきっかけで起こっているので分かりにくいが、一時1.8%近くまで上がっていた長期金利が1.3%まで下がっていることは株式市場には明らかにプラスの要因である。
また、テーパリングを示唆したにもかかわらず長期金利が上がらなければ、住宅ローン金利などを通じて実体経済のインフレを抑えることも出来ていないことになる。
それどころか長期金利は下がっているので、住宅ローン金利なども下がることになるだろう。Fedのテーパリング示唆によってインフレの火に更に油が注がれているのである。
長期インフレシナリオには最良の環境か
よって現在の状況は長期のインフレシナリオを信じる投資家にとっては最良の環境ということになる。現在の低金利は来年や再来年のインフレ率を更に押し上げるだろう。経済学者ラリー・サマーズ氏のインフレシナリオに一見反しているような金利低下トレンドは、むしろ長期的には強力なインフレ要因となる。
一方で何度も述べているように今後数ヶ月の物価指数には3月に行われた現金給付の影響など短期要因の剥落が見られることになる。だがその後にはサマーズ氏の説明するような長期の要因が表面化し、更には現在の低金利の影響も表れてくることになる。
よって長期金利は今後数ヶ月の何処かのタイミングで底を打つことになる可能性が高い。短期的なディスインフレ相場における金利低下は長期的なインフレ相場の原因となり、長期金利は何処かで転換せざるを得ないからである。
この転換に賭けることは今年後半の1つの大きなトレードである。また、その時にはコモディティもまた強力な上昇相場を再開するだろう。
そしてそのコモディティには現在下落している暗号通貨も含まれている。
上記の記事で報じたように、現在のビットコイン急落を予想的中させたマイナード氏はより長い下落相場を想定しているようだが、筆者は長期金利の転換点には暗号通貨も反転を始めるのではないかと考えている。以下はビットコインの価格チャートである。
ビットコインのチャートがアメリカの長期金利にかなり相関してきたことからも、ビットコインがインフレトレードで買われてきたことが分かる。だとすれば、インフレ相場再開で持ち直すはずである。
また、筆者がビットコインよりも推しているイーサリウムは以下のように推移している。
暗号通貨についてはジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementが最近暗躍を始めたようで、マイナード氏よりは筆者の予想に近いのかもしれない。
ビットコインとイーサリウムについては以下の記事を参考にしてもらいたい。今後もインフレ相場について報じてゆく。