ビットコインが強烈な下落トレンドを続ける中で面白い動きが耳に入ってきた。TheStreetが伝えるところによると、ジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementが本格的にビットコインのトレードに参入したという。
急落中のビットコイン
今年のビットコイン相場は暗号通貨らしい値動きとなっている。年始から思いっきり上昇した後、最高値の半値まで急落した。
この動きを事前に予想したのが債券投資家のスコット・マイナード氏である。
長期的にはビットコイン価格の上昇を見込んでいるマイナード氏だが、最高値からかなり下落したビットコインの弱気相場はまだ終わっていないと見ており、彼によればビットコイン価格はここから更に半分以上下落するという。
マイナード氏によればビットコインが上昇相場を再開するまでには1、2年かかるとのことであり、ここまで見事にビットコイン相場の先行きを当てているマイナード氏の言葉だけにビットコインにとっては暗雲の立ち込めた状況だと言えるだろう。
しかしここで面白いニュースが入ってきた。Soros Fund Managementが本格的にビットコインのトレードを開始したそうである。Soros Fund Managementはこれまで暗号通貨の関連技術には投資をしていたが、暗号通貨そのものには参入していなかった。
主に報じられているのはビットコインのトレードだが、他の暗号通貨もトレードしている可能性もあるという。ソロスファンドは暗号通貨のトレードを長らく検討していたが、ここ数週間でようやくCIO(最高投資責任者)のドーン・フィッツパトリック女史がトレードに青信号を出したらしい。ビットコインが急落しているこの状況でというのが非常に面白い。
ソロスファンドの意図
「トレード」としか報じられていない以上、もちろん空売りの可能性もなくはない。しかし上記の記事で報じたフィッツパトリック氏の暗号通貨への強気の見方と、逆張りトレードに積極的な彼女の(そしてソロス氏の)気質を考えれば、これほど下落した資産クラスに後出しで空売りを行うようなトレードは考えづらいだろう。フィッツパトリック氏は去年3月に暴落していたモーゲージ債(住宅ローン債券)を底値で嬉々として買っていた。そういう女性である。
また、Soros Fund Managementは非上場のブロックチェーン関連会社の買収を議論しているとも報じられている。やはりビットコインに強気の方向で動いているのだろう。
しかし問題はタイミングである。現在もっとも当てているマイナード氏が弱気相場はまだ続くと主張している。しかし前回の記事で説明したようにマイナード氏の論理には1つだけ瑕疵がある。株価の下落予想が今のところ当たっていないことである。
アメリカでは株価が下がらない状態で長期金利が低下している。リスクオフの金利低下ではなくディスインフレの金利低下であれば、少なくとも株式にとってはプラスとなる。
ディスインフレは金属や穀物などのコモディティ、そして同じくコモディティに属するビットコインなど暗号通貨にとってはマイナスになるのだが、株価急落が起こるシナリオよりは暗号通貨にとってマイナスにはならないかもしれない。
マイナード氏のここからの半値までの下落予想が株価急落が起こることを前提とした目標値であるならば、株価急落が起こらなければビットコインはそこまでは下落しないのかもしれない。
Soros Fund Managementは株式についてはどう考えているのだろうか? ソロス氏のファンドは当然ながらマクロ投資の先駆け中の先駆けであり、想定しているマクロシナリオがあるのだろうが、ソロス氏が政治活動に専念するようになってからあまり表でそれを喋ることがなく、出てくる情報で推測するほかない。
筆者としては短期的なインフレ要因が剥落する今後数ヶ月は暗号通貨を含むコモディティには全重心を乗せにくい。インフレ警戒派のジェフリー・ガンドラック氏も同様だろう。
ビットコインに一番弱気なのがマイナード氏、一番強気なのが、もしかすればSoros Fund Managementかもしれない。それぞれの思惑はどのような結果を出すだろうか。今後も著名投資家の動向を報じてゆく。