新型コロナウィルスによる4月の世界的ロックダウンを経て世界は落ち着いたように見えたが、やはり何も終わってはいなかった。
10月28日、フランスのマクロン大統領は新型コロナウィルスの第2波が欧州全体で止まらない事態を受け、店舗などの閉鎖を命じるロックダウンを再び12月1日まで行うことを発表した。
コロナが止まらない欧州
爆発的な流行を見た第2波以降、日本などでは比較的収まったように見える新型コロナウィルスの流行だが、欧州では第2波の勢いがまったく弱まっていないことはこれまでも伝えていた通りである。
この記事で報じたフランスの10月14日の新規感染者数は22,591人だったが、10月29日の新規感染者数は47,637人であり、流行は更に広がり続けている。その他の国での最新の新規感染者数は次のようになっている。
- イタリア: 26,829人
- スペイン: 23,580人
- イギリス: 23,065人
- ドイツ: 18,681人
どの国も指数関数的に感染が増えており、フランスほど厳しい措置ではないがドイツも飲食店や娯楽施設の閉鎖を決めたほか、スペインも緊急事態宣言を出して夜間の外出を禁止、イタリアも娯楽施設を閉鎖している。
4月のロックダウンがGDPに大きな影響を与えたのは周知の通りだが、今回も同じような状況になると想定され、欧州株は下落が始まっている。以下はドイツ株だが、4月のロックダウンが企業利益にどれだけの穴を開けたかを考えれば、この下落はまだまだ足りないだろう。
企業利益は激減し、その穴をまた量的緩和と現金給付で埋めることになる。ここでは何度も説明しているが、その犠牲になるのは為替、つまりユーロの暴落である。
株価の基礎となる企業利益は政府が紙幣を印刷すれば救える。しかし政府の力では救えないものが金融市場には1つだけある。為替レートである。
ユーロは暴落へ
ヨーロッパやアメリカ、日本などの先進国はもう何十年も金融緩和によって市場と経済を支えてきた。限界はないのかと言えば、限界はある。それは為替レートが下落するときであり、そうなってしまえば政府はもう何もすることができない。
しかしかつて世界の基軸通貨だったオランダ海洋帝国や大英帝国の通貨が緩慢な下落を経験したように、その流れは長期に渡るものである。
だからこそ永遠に来ないような錯覚を覚えるのだが、それは必ず来るものである。そして現在存在する先進国の内どの地域が一番にそれを経験するかと言えば、筆者はそれがユーロ圏であると今年の前半から言い続けている。
その理由はギリシャやポルトガルなど一部の国が既に先進国とは呼べない状況になっていること、欧州人がコロナを完全になめていることである。まずヨーロッパが栄え、次にアメリカが栄えたが、先に衰退するのもヨーロッパであると筆者は予想している。それは覇権国家の衰退という非常に長いトレンドの一局面なのだが、遂にその時が来たようである。
ユーロの暴落とスイスフラン
為替相場を見てみよう。ユーロドルのチャートは次のようになっている。
ここ1週間ほどロックダウンに反応して下がり始めているが、この件について見るべきチャートはユーロスイスフランだろう。
何故ユーロをスイスフランと比べるかと言えば、筆者がユーロスイスフランの為替レートを欧州のコロナの影響にもっとも忠実なバロメーターだと考えているからである。
ユーロドルやユーロ円では米国や日本の影響がレートに出てしまう。欧州だけでなく米国でも流行が加速すれば、ユーロとドルはともに下落し、ユーロドルは必ずしも下落という結果にはならないだろう。
しかしユーロスイスフランはコロナの影響を如実に反映する。ロックダウンが行われれば貯蓄の多い者が勝者となる。一時的に収入がなくとも生きていけるからである。
スイスは欧州随一の富裕層の国であり、政府債務も少ない。ロックダウンが行われれば行われるほどスイスとその他の国の余裕の差が現れてくるだろう。一方ユーロ圏はどんどん紙幣を印刷しなければならなくなる。それがユーロの価値をスイスフランに対して下落させてゆくだろう。筆者はこのトレードをかなり堅い取引だと見ている。
また、金融市場にとっての大きな問題は、欧州株が下落した場合に米国株や日本株が無事でいられるかどうかである。現代の金融市場はすべて繋がっている。1つの市場が下落をすればその影響はすぐ隣の市場に現れるだろう。それを紙幣印刷が支えられるかどうかである。