新型コロナウィルスの主戦場は中国からヨーロッパに移り、そしてアメリカに移り、そして今では南米となっている。中でも累計感染者数が60万人を超えてアメリカに次ぐ世界2位となったブラジルでは日々更新される感染者数と死者数のデータは目を覆うような惨状である。
そこでブラジル政府は画期的な解決策を思いついた。累計感染者数と死者数の公表を止めたのである。これで目を覆うような惨状に対して見事に目を覆うことができるというわけである。
ブラジルの流行状況
ブラジルにおける流行状況は春先から何ヶ月も改善していない。直近10日間の累計感染者数、1日の増加数、増加率のデータを見てみよう。
- 5月29日: 465,166人 (+26,928 +6.1%)
- 5月30日: 498,440人 (+33,274 +7.2%)
- 5月31日: 514,849人 (+16,409 +3.3%)
- 6月1日: 526,447人 (+11,598 +2.3%)
- 6月2日: 555,383人 (+28,856 +5.5%)
- 6月3日: 584,016人 (+28,633 +5.2%)
- 6月4日: 614,941人 (+30,925 +5.3%)
- 6月5日: 645,771人 (+30,830 +5%)
- 6月6日: 672,846人 (+27,075 +4.2%)
- 6月7日: 691,758人 (+18,912 +2.8%)
順調に増加している。これは過去10日間だけのデータだが、1日当たり5%程度の増加が4月頃からずっと続いている。累計感染者数は公表が取りやめとなったが、日々の新規感染者数は公表されるため、足し算すれば累計感染者数は出てくる。ブラジル政府によれば「過去の数値は誤解を招く」そうである。何の誤解を招くのだろう?
ロックダウンは州や都市ごとに3月頃から施行され、5月頃から緩められ始めているが、何故かロックダウンの施行も解除も感染者数の推移にはほとんど影響を及ぼさず、感染者数は一貫して1日5%程度上昇し続けている。恐らく国民がロックダウンに従っていないのだろう。
新型コロナを「ちょっとした風邪」と呼んだボルソナロ氏が大統領に選ばれているだけのことはある。コロナに関する彼の語録は以下の記事で取り上げているので、そちらも参考にしてもらいたい。
ブラジルと金融市場
さて、ブラジルに関しては投資家にとって面白い事実がいくつかある。まずは鉄鉱石が上がっている。ブラジルはオーストラリアに次ぐ世界2位の鉄鉱石生産国であり、新型コロナの流行でブラジルにおける採掘が滞り、輸出が減少しているからである。
ブラジルで鉄鉱石を採掘している大手Valeの採掘場では新型コロナに感染した作業員が何人も出ているようであり、鉄鉱石を掘るのも命がけである。鉄鉱石の価格は次のように推移している。
中国での需要が回復するもブラジルの感染状況が回復していない状況を反映して5月から上昇している。
しかしブラジルのその他の輸出品は回復しつつある。筆頭は原油である。
また、筆者の買っている砂糖もブラジルで生産されている作物である。ブラジルは砂糖の生産量が世界1位である。
砂糖価格は以下の記事で説明した理由で原油価格と連動しているので、こうした動きになっている。
ブラジルの輸出品が上昇している状況を反映し、急落していたブラジルの通貨レアルも戻りつつある。以下はドルレアルのチャートであり、上方向がドル高レアル安である。
しかしこの戻りは性急だろう。ブラジル経済の正念場はここからである。
金融市場が完全な楽観とともに色々なものを反発させてくれたお陰で、投資家としては売るものが沢山ある。コロナで一番影響を受けるのは銀行株だというのは何度も言及しているが、よりにもよってブラジルの銀行株まで反発しつつあるからである。以下は大手銀行のItau Unibancoのチャートである。
こうした状況が長期的に続くと思う投資家はそれに乗れば良いだろう。筆者は安いものを買い、高いものを売ってゆく。砂糖はもう少し持っていても良いだろう。