株式市場が着々と上がり続ける中、陰鬱な経済統計が着々と出揃い始めている。アメリカでほぼ全期間ロックダウンとなっていた4月の実質個人消費は前月比年率で-81.7%のマイナス成長となった。少し前に紹介した小売売上高とは違い、個人消費はGDP統計の大きな部分を占めるため、第2四半期の経済成長率を部分的に直接示唆したデータとなる。
崩壊した個人消費のチャート
毎度のことだが、年率とは「このペースで1年間マイナス成長を続けた場合、年間の下げ幅はこの数字になる」というデータであり、単純な前月比の数値は-13.2%である。通常であれば単純な前月比のデータは小さすぎるので前月比年率を使うが、新型コロナ後の経済を計るためには年率は大きすぎる。
実際にどの程度の下がり方なのかはグラフを見れば分かる。
直近10年の上昇分を一気に使い果たしたということである。
4月はアメリカでロックダウンが一番厳しかった月であることを考えると、この下落が個人消費の底にはなる。しかし5月もロックダウンは完全には解除されておらず、6月以降もすぐには飛行機などに乗ってビジネスや観光をし、外食を満喫する普段の状態に戻るわけでもない。また、所得格差が激しく借金が多い社会ほどコロナ後の回復が遅れるということは以下の記事で説明している。この点でもアメリカは不利である。
こうしたことを考えると、2020年全体ではアメリカの個人消費は-5%から-10%のマイナス成長になるのではないか。リーマン・ショック後の2009年でも-1.3%だったことを考えると、これは空前絶後の景気後退ということになる。
また、4月に物価がどうなっているかと言うと、前月比年率で-9.1%のデフレとなっている。
個人消費などの実質のデータは物価下落分を含んでいないので、実質でも悪いこれらの経済データは物価下落分を考慮すると更に悪いということになる。
悪化する経済、上昇する株式市場
さて、こうした実体経済の様子など何もなかったかのように株価は上昇を続けている。
長年投資家をやっていると良く見る光景である。
株価についての意見は既に述べておいた。また、他の著名投資家の見解も紹介している。筆者の一目置いている投資家の中で現在株を買っている投資家はいない。
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しかし今回の経済データを見て1つ付け足すならば、インフレが株価にとってプラスに働くように、デフレは株価にとってマイナスに働くということである。売上や企業利益は経済統計の実質データとは違い、デフレのマイナス分を差し引いた数字になってはくれないからである。実体経済は実質のデータでも既に最悪だが、株価に影響するのはデフレ分も含めた名目のデータであることに留意したい。
さて、株式市場の動向はここからどうなるだろうか。楽しみに眺めておきたい。