グローバル・マクロのポートフォリオ構成比率公開、2015年2月

ユーロ圏の量的緩和もようやく通過し、市場は面白い材料に欠けているというのは事実であると思うので、この辺りでポートフォリオの構成比率の公開をしてみたい。ここまでは個別銘柄の紹介などをやってきたが、いつも言及している例の記事で書いたリスク要因によって、ここから先は個別銘柄の選択よりもポートフォリオ全体の構成が重要だからである。

銘柄の保有比率は毎日微妙に調整しているため、リアルタイムの厳密な数字ではなく、2月に入ってからの平均値をおおまかに示したものだが、ポートフォリオの方針は読み取ることができると思う。先ずは銘柄の構成比率からである。

  • 米国株ロング 40%
  • 米国株ショート 33%
  • 欧州株ロング 50%
  • 日本株ロング 8%
  • 中国株ロング 5%
  • ウラン先物ロング

数字だけを見れば、全体的には買い持ちが多いと見られるかもしれないが、米国株のロングポジションはかなり割安のものだけを限定して選んでおり、市場全体が30%下がったとしても20%も下がりようのない銘柄ばかりを保有している。その意味では、米国株のポジションは全体では下落相場のほうがパフォーマンスが良くなると言え、弱気のポートフォリオだと考えている。

欧州株の買いは総資産の半分を占め、ほぼすべてが量的緩和に恩恵を受ける銘柄である。これらの買い持ちにショートのヘッジを入れるかどうかは悩んだが、量的緩和相場でショートポジションを持つことが賢明だとは思えず、買い持ちをそのままにしている。

上記の記事で「2015年前半の米欧の株式の動きは、金融市場において、流動性とファンダメンタルズのどちらが勝利するのかを推し量る試金石となるだろう」と書いたが、このポートフォリオ構成は、結果的には、わたしが米国の景気回復よりもユーロ圏のQEを信じることを選んだことを意味する。

流動性相場か業績相場かという命題に確固たる結論があるわけではない。ただ、現在の米国市場で買い持ちをヘッジしないままでいることに居心地の悪さを感じ、量的緩和の支えるユーロ圏の市場でショートすることに同様に居心地の悪さを感じた結果のポートフォリオである。どういう結果になるかは、神のみぞ知るが、悪い結果にはならないと踏んでいる。

債券については、ドイツ国債先物を随分前に手仕舞ってから手を出していない。利上げを見据えて米国債を空売りすることは考えたが、米国の保険株の買いで代用する方が賢明だと判断した。実際、以前紹介したLincoln National (NYSE:LNC、Google Finance)は10%以上も上がっているから、今のところは正しい判断だったと言えるだろう。

商品市場で唯一ポジションを持っているのはウラン先物の買いである。ウランについては保有比率の公表は控えたいが、懸念のないポートフォリオではない。エネルギー資源の価格下落とドル高がウラン価格にまで影響を及ぼす可能性が否定できないためであり、したがって原油下落に恩恵を受ける株式銘柄の買いでリスクを相殺できるように比率を常に調整している。また、逆に言えば、ウランの買いは原油反発リスクを軽減してくれているとも言える。

為替のエクスポージャーは以下の通りである。

  • 米ドル 98%
  • 英ポンド 2%

ユーロの空売りを手仕舞ったあとは、為替にはほとんど手を出していない。ドル円も自信を持って買いを入れられる水準まで下がっていないため、ショートを入れず、単純にドルをそのまま保有している。

米ドルに懸念がないわけではない。輸出産業は既にドル高に懸念を表明しており、ロイターによれば、ルー財務長官は「通貨切り下げ競争は誤り」だが「量的緩和は通貨切り下げ競争ではない」という微妙な姿勢を示している。レーガン大統領の時のように、ドル高がどこかの時点で反転する可能性はある。しかし、他に良い通貨があるわけでもない。リスクをヘッジするという観点からは、ポンドの保有を増やすべきかもしれない。利上げは米国より遅いと思われるため、短期的なパフォーマンスは下がるだろうが、その分リスクは減るだろう。これは今後考えるべき課題である。