世界最大のヘッジファンド: 世界同時株安は取るに足らない一時的調整

アメリカ発の世界同時株安で金融市場が荒れている中、世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedIn(原文英語)において株高は続くと主張している。以下に紹介してみたい。

それでも株高は続く

先ず、読者には周知の通り、1月の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)に出席したダリオ氏は株式市場に強気な見方を表明していた。

その直後に株価は急落する形となった。米国株のチャートは以下のようになっている。

しかし、それでもダリオ氏は強気な見方を崩していない。彼は次のように述べている。

ここ1週間ほどの間にアメリカ経済について高成長と賃金上昇に関する統計(良い事だ!)が発表された。結果として、Fed(訳注:連邦準備制度)による金融引き締めが市場で織り込まれているよりも急速なものになるという正当な恐れから債券と株式が下落(ほとんどの投資家にとって悪い事)した。

前回の記事でも説明したが、株安の原因自体は明白であり、それはアメリカ長期金利の上昇である。国債の金利が上がれば、株式よりも国債に投資する投資家が増え、株式市場から資金が流出する。長期金利は年始から急騰しているが、短期的には株安を受けて少し下がっている。

アメリカの中央銀行に相当するFedは、金融引き締めを行う中で長期金利が上がりすぎないようにするために苦労していたのである。ダリオ氏はその難しさについても言及している。

現在の状況では、Fedが正しい金融政策を維持することは簡単ではなく、失敗すれば経済が景気後退に陥ってしまう。これは債務サイクルの後期においては典型的な状況である。

しかし、ダリオ氏はそれでも株価は上がると言う。理由は以下の通りである。

それでもこうした大きな急落は、より長期的な観点で見れば取るに足らない調整に過ぎない。株価上昇が一旦停止すれば買いを入れようとする資金が大量に存在している。次に何が起こるかということが一番重要なのだ。

大量に存在する資金が株価を押し上げるというのはダボスでも言及していた理由である。恐らくはトランプ政権の法人減税などで企業にキャッシュが余っている状況を指しているのだろう。ダボスでは次のように述べていた。

あらゆる場所に現金が積み上がっている。投資家の現金だけではなく、銀行や企業も大量の現金を抱えている。だから市場はこれから大量の現金に溺れることになる。それは強力な緩和となり、市場は恐らく吹き上がることになるだろう。言葉を変えれば、現金をそのまま保有している投資家は馬鹿を見ることになる。

中央銀行が金融引き締めで資金を引き上げても、企業などから流れ込む資金によって株価は上昇を続けると主張しているのである。

結論

しかし、ダリオ氏は一番重要な点に触れていない。つまり、彼は「金利は上がるがそれでも株高になる」と言っているのか、「金利は上がらないから株高が続く」と言っているのかということである。金利についてはダボスでは次のように述べていた。

現在の市場は金利に非常に敏感で、金利が現時点から1.00%か1.25%でも上がれば市場は崩壊するだろう。

しかし金利の上昇自体は避けられないだろう。因みにここでは長期金利の急騰シナリオについても事前にしっかり指摘しておいた。

もし金利の上昇が避けられず、しかもダリオ氏の言う通りに4回か5回の利上げで市場が崩壊するならば、ダリオ氏の株高シナリオは金利がかなり細いレンジの中を歩いてゆく想定ということになる。株式市場についてはダリオ氏と反対に、債券投資家ガントラック氏のような弱気意見もある。

しかし、ダリオ氏はそもそも米国株を買っているのだろうか? 前回のポートフォリオ公表の時点では彼が買っていたのは米国株ではなく、新興国株だった。

因みに機関投資家のポートフォリオの次の公表は1週間後にあり、年末時点でのダリオ氏の保有銘柄などが明らかになる。そちらも報じるつもりなので、楽しみにしてもらいたい。