ガントラック氏: ジャンク債は死んだ、長期金利は3%を超えても上昇が不十分

著名債券投資家のジェフリー・ガントラック氏が債券市場一般に死刑宣告をしている。つまりは金利が上昇するということである。

長期金利急騰、市場への影響

ここ数週間でアメリカの長期金利が急騰しており、トランプ政権誕生以来ほとんど調整することなく上昇してきた株式市場も、その影響を受けて急落している。株式投資家にとっては、この長期金利が今後どうなるのかが問題となる。ガントラック氏は金利の水準について、Reuters(原文英語)に対し次のように語っている。

高リスク資産が暴落し、投資家が恐怖から安全資産に逃避するような状況にでもならなければ、この状況で債券の買いが魅力的になることはないだろう。

GDPNow(訳注:アトランタ連銀のGDP予測)が2018年1-3月期の年換算経済成長を名目(訳注:インフレ込み)7%以上と見積もっている状況では、10年物国債の金利が3%あったとしても、債券の買いを選好することは難しい。

順番に解説するが、先ず安全資産への逃避で金利安になるというのは、つまり2008年の金融危機のような状況を指しているのだろう。2008年には市場崩壊によって国債に資金が集中し、金相場は急落した。

しかし、そもそも金利高が株安の原因となる2018年の状況とは違う。また、2018年は株式市場が完全にクラッシュするような状況でもない。つまり、ガントラック氏はその金利低下シナリオは可能性が低いと指摘していることになる。

また、現在のアメリカ経済のように成長率が高いと債券安、金利高となる。金利は基本的には経済成長率とインフレ率の和(つまりは名目経済成長率)と近似するとされているからである。

因みにガントラック氏の言うGDPNowの年率7%というのは、単に前期が季節調整の計算の問題によって低く出た分を取り戻そうとしているだけであり、やや誇張されている。より長期的な傾向についてはわたしの記事を見てもらった方が分かりやすいだろう。

ただ、それでもトランプ政権のもとでアメリカ経済が成長していることには変わりがない。

長期金利は何処まで上がるのか?

さて、投資家にとっての問題は、株式市場と為替市場の両方に影響する長期金利が何処まで上がるかということである。長期金利のチャートは現在以下のようになっている。

かなりの速度で上昇している。金利が上がれば上がるほど、投資家は株式ではなく国債に投資しても利益が出る計算となり、株式から債券市場へ資金が流れることになる。

ガントラック氏によれば、国債の下落によって金利が3%を超えたとしても国債は買いたくないと言う。つまり、3%を超えても金利上昇が止まることを予想していないということだろう。これは株式市場にとっては当然ネガティブとなる。

これが中央銀行が市場から資金を引き上げること、つまり金融引き締めの意味である。このことについては去年の後半から話し続けているが、まともに受け取らなかった投資家が市場には多かったのだろう。だから金利上昇にこれだけ時間がかかったのである。

因みに米国株のチャートは以下の通りである。

筆者は暴落というほどの下げにはならないと見ているが、個人的には一部の個別株を除き米国株にはほとんど触れていないので、それが筆者の判断であると受け取って欲しい。ガントラック氏は、少なくとも年始からの上げ幅をすべて吐き出すと見ているようである。

では、この状況で利益を生み出すトレードは何か? これについては昨年から同じことを言い続けている。以下は昨年11月の記事だが、こうした局面で考えられるトレードをすべて挙げた上で、ジャンク債の空売りが一番有望だとはっきり書いてある。

因みにガントラック氏はジャンク債についてTwitter(原文英語)で以下のようにコメントしている。

ジャンク債のチャートが死んだようだ。ここからはもう勝つ道はない。

ジャンク債ETFのチャートは現在以下のようになっている。

結論

毎度のことだが、相場がどうなるかということについてはここで事前に書いてあるので、是非しっかり読み込んでほしいものである。儲かるものではなく多くの人が取引しているものをトレードしたがる投資家にとっては株価やドル円などをはっきり予想した方が受けは良いのだろうが、相場には各状況に取引にもっともふさわしい銘柄というものがある。2016年は金相場であり、2018年はジャンク債ということである。

2017年は原油のレンジ予想など地味な取引が多かったが、今回は綺麗に決まったのではないか。金利の上昇を待っていたというのもある。

また、株式市場の下落が今後どうなるかについて気になる読者は以下の記事を参照してほしい。特に米国株を触ろうと思える時期ではないことが納得してもらえるだろう。今後も金融市場の動向について記事を上げてゆく。