ガントラック氏、米国株空売りを開始

昨年以来トランプ相場を的確に予想してきたDoubleLine Capitalのジェフリー・ガントラック氏がついに米国株の空売りを開始した。Reuters(原文英語)が伝えている。

ガントラック氏は先週末に米国株がやや下落したことを受け、以下のようにコメントした。

ポジションを開始した初日は損失を出したが、今では非常に上手く行っている。まるでお金が落ちていたかのようだ。

もっと賭けておけば良かったと今では思っている。

現状では米国株は以下のように推移している。

厳密には、ガントラック氏は米国の株価指数S&P 500のプット・オプションを購入したようである。プット・オプションの買いは株価の下落に賭けるトレードで、しかし単純な空売りとは違い、目標の水準よりも上昇した場合に損失を負わない代わりに、どちらに転んでも一定の保険料を支払うことになる。

この保険料はオプションの価格に加算されており、それは市場のボラティリティ(上下動の激しさ)に比例する。つまり、ボラティリティが低い時にオプションを買えば、その後ボラティリティが高くなった場合、オプションの価格が上がり、買い手の利益にもなるということである。ガントラック氏はこう述べている。

株式市場は弱気の季節にあるが、それよりも重要なのは、われわれがVIX(ボラティリティ指数)が非常に非常に低い水準にあると考えていることだ。だから、S&Pのプットを買うことは、ボラティリティ上昇に賭けていることを意味している。

米国市場のVIXは以下のように推移している。先週末の株価下落で指数は少し上昇している。

つまり、ガントラック氏は米国株が今後激しく動き、かつ下落することを予想しているのである。これは彼が少し前から主張していたことで、その相場観に基づいたトレードを開始したということだろう。

株式市場は暴落するのか?

そこで、少し前の記事で書いたこの主題に戻ってくるわけである。

ガントラック氏ではないが、筆者も個人的に米国市場にかなり違和感を感じていることは確かである。「量的引き締め」と言うべき金融引き締めにほとんど無反応で居ることもそうだが、先日のGDP統計が良かったにもかかわらず、ドル安で反応したこともそうである。楽観が過ぎるのであり、過度な楽観は上げ相場の頂点を意味する。

しかし、下落が始まった時、それがどういう原因に基づくどの程度の下落相場なのかを予め理解しておくことは、株式トレーダーにとって役に立つだろう。それは量的緩和バブルの崩壊で、2008年からの上昇相場すべての付けを払わせるものなのか? あるいは2016年末からのトランプ相場の急上昇が調整するものなのか?

この問いに対する筆者の仮説は、以下の記事に書いておいた通りである。だからこの記事の主題は重要なのである。