ECBが量的緩和を発表、買うべき銘柄は何か?

1月22日にECB(欧州中央銀行)がマネタリーベースを2倍にする量的緩和を発表した。詳細は上記の記事で見ることができるが、とりあえずは欧州市場のみならず米国市場でも、株式・債券ともに好感した形となった。市場の上昇が短期的にどれだけ続くかは分からないが、分かっていることはユーロ圏の低金利が続くということ、そしてその間ユーロ安・ドル高が維持されるということである。

大手の不動産株などは、既にこれらの要素を織り込み始めている。長らく紹介してきたパリの不動産会社Gecina (EURONEXT:GFC)は、量的緩和を受けて連日上昇し、紹介時の株価€97から17%上昇した。€118程度まで上がれば徐々に利益を確定していって良いだろう。

このように既に上がってしまった銘柄もあるが、不動産株や輸出株などの中には、これからでも買える銘柄がまだ存在する。今日はそのような銘柄の中から2つを紹介したい。

先ずは輸出株の筆頭、メルセデス・ベンツやマイバッハなどの自動車を製造するDaimlerである。ドイツの製造業は、低い賃金と安いユーロという欧州の現状から恩恵を受ける業種であり、中でもDaimlerはその筆頭である。Daimlerの売上は半分以上がアメリカ大陸およびアジアからのものであり、Q1-3の前年比売上成長率は10%、P/E(株価収益率)が11台と、量的緩和を完全には織り込んでいない割安な株価で取引されている。

利益の伸びは売上の伸びに劣るが、ユーロ高の改善は昨年の半ばに始まったばかりであり、2015年の利益改善が期待される。P/E 10-12の水準で買いを入れることが出来れば比較的堅い取引になるだろう。ただし、バブルに発展する種類の銘柄ではないため、高値追いは禁物である。P/E 14-15あたりでの利益確定を考えたい。

もう1つは、ドイツのフランクフルト国際空港を保有・運営するFraportである。12月のデータでは、フランクフルト国際空港の利用者は、41.1%が欧州以外の地域からの旅客(但し、イギリスなどユーロ圏以外の国も欧州に含む)であり、また立地もフランクフルトの市街地にそれほど遠くない場所であるため、量的緩和によるユーロ安と不動産価格の上昇の両方に恩恵を受けるQE銘柄の大本命である。しかも原油安が続けば旅客が増え、それも追い風となるだろう。

量的緩和のもとに日本の不動産株をフォローしてきた投資家にとっては、日本空港ビルデング (TYO:9706、Google Finance)や空港施設 (TYO:8864、Google Finance)が大幅な値上がりを見せたのは記憶に新しいだろう。€45-€55のレンジで売買をしながら、この値幅を上抜けることを期待したい。

ECBの量的緩和は欧州の株式市場で徐々に織り込まれていっているが、まだ完全には織り込まれていない。統計を取ったわけではないが、個人的な印象では欧州株は米国株よりも織り込みがやや遅く、しかしデフレ期の日本株のように、買われるべき銘柄が長期間放置されるということもなく、中長期的には適切な株価へと収斂してゆくイメージがある。適切な銘柄を適切な価格で買うことで報われる市場であると考えたい。欧州株の動向はこれからもフォローしてゆく。