報じるのが少し遅れたが、米国のトランプ政権の動向を報道するために必要なニュースなので、共有しておきたい。
“ロシア疑惑”の実情
アメリカのCNNは6月22日、トランプ大統領の経済顧問であるアンソニー・スカラムッチ氏がロシア人投資家との関係について米国議会の調査を受けているとの記事を公開したが、スカラムッチ氏はこの報道を否定していた。
24日、CNNはこの記事が十分な裏付けをもとに書かれていなかったことを認めて記事を撤回、26日には記事執筆に関わった記者3名の辞職を発表した。BBCなどが報じている。辞職をすることになった記者の中には、2006年にピューリッツァー賞を受賞しているリクトブラウ氏などが含まれているという。
これまでも報じている通り、アメリカでは大手メディアと野党民主党がトランプ政権の”ロシア疑惑”を追求している。
- ロシア大使との会話を巡ってフリン大統領補佐官が辞任に追い込まれる
- トランプ政権: ロシア疑惑対策で「極右」バノン氏復活か
- ジム・ロジャーズ氏: 米国のロシア嫌いはオバマ政権によるウクライナ政権転覆が露呈して決まりが悪くなったから
しかしこの「ロシア疑惑」に関しては完全な疑問符が二つある。
第一に、アメリカの政治家がロシアの関係者と連絡を取ること自体が疑惑となる理屈が理解不能である。連絡の内容が問題となるならばまだしも、国家間のコミュニケーション自体が問題となるのはどういう理屈なのか。事実、トランプ政権を批判している民主党の政治家達も、トランプ政権と関わりがあったとされているロシア大使と(政治家として当然に)関係を持っており、彼らが一体何を批判しているのかが明確ではない。
第二に、トランプ大統領も主張する通り、ロシアとの関係においてトランプ政権が何か不正を行なったという証拠は何一つ提出されていない。
それらに加えて今回のCNNの騒動である。いわゆる「ロシア疑惑」というものの底が透けて見えるようである。
トランプ政権側の反応
先ず、トランプ大統領はこの騒動についてTwitter(原文英語)で以下のようにコメントした。
わお、CNNが「ロシア疑惑」についての壮大なストーリーを撤回する羽目になり、記者3人が辞職させられた。他のすべてのいかがわしい記事についてはどうするのだ? フェイクニュース!
まあ当然の反応だろう。当事者のスカラムッチ氏はより大人の対応(原文英語)をしている。
CNNは正しい対応をした。立派だ。謝罪を受け入れる。誰でも間違いを犯すことがある。前へ進もう。
“フェイクニュース”
因みに「フェイクニュース」とは、アメリカ大統領選挙後にリベラルの人々によって作られた造語で、彼らによれば、トランプ氏の勝利は大手メディアを通さないネット上のでたらめな記事群によってもたらされたもので、ネット上の記事がなければヒラリー・クリントン氏が勝利したはずだとの意向を受けたものである。
彼らはこうした主張をもとに何をしたいのか? つまるところ、彼らの目的は自分達に有利な大手メディアを通さない自由な情報を統制することであり、つまりはインターネット規制である。米民主党がインターネット規制を進めようとしていることも以前報じてある。
だが、この「フェイクニュース」騒動に関して、トランプ大統領が大手メディアこそフェイクニュースだとやり返したことでこの定義はうやむやになった。
大手メディアとインターネットのどちらを信じるかということは民衆に委ねられるわけだが、そもそもトランプ氏が大統領選挙で勝利した理由自体がアメリカ国民の大手メディアへの強烈な不信感にあるのだから、大手メディアの自己正当化は成功していない。そして今回のCNNの件である。
しかし、一方でリベラルの急先鋒でEUを率いるドイツは着々とインターネット規制を進めている。移民政策などドイツがヨーロッパの近隣諸国に押し付けた政策が批判されては困るからである。
このインターネット規制法案は6月末にドイツの議会を通ったらしい。ナチスによる言論弾圧とアーリア人自画自賛政策が選挙で大勝したような国なのだから、今更何が行われても不思議ではないが、今のドイツ人は戦前と違うのではないかと思う日本人も多いかもしれない。
しかし日本人が戦前から本質的には何も変わっていないように、ドイツ人も何も変わっていないのである。彼らは自分の都合の悪いものには蓋をしようとする。ある国民の性質が急に何か別のものに変わると思える方が非合理的ではないか。