5月3日、アメリカの金融政策を司るFed(連邦準備制度)はFOMC会合を行い、政策金利の維持を決定した。結果自体は予想通りであり、問題となるのは今後の利上げを示唆する声明文の内容である。
FOMC会合声明文
発表された声明文の内容は、先日発表されたGDP統計の内容をほぼそのままなぞったものとなった。その部分を引用してみよう。
実体経済は減速したが、労働市場は改善を続けている。失業率は減少した。個人消費の勢いは強くはないが、消費を支えるファンダメンタルズは強固なままである。企業投資は強まった。
この現状認識そのものはすべて最新のGDP統計をそのままなぞっている。1-3月期のGDP統計を報じた以下の記事を読んだ読者には理解してもらえるだろう。
しかし、個人消費の減速と、そして企業投資が強まったという部分については、イエレン議長は上記の記事でわたしが指摘した事実を見逃している。つまり、個人消費の減速は長期金利が高止まりする限り続き、確かに強まっている企業投資も、原油価格の回復という一時的な要因によるものに過ぎない。つまり、声明文の次の結論は誤りである。
第一四半期における経済の減速は一時的なものであると見ている。
厳密には、長期金利が高い水準にある限り個人消費の減速は続き、一時的なのはむしろ好調な企業投資の方である、ということになる。実体経済と長期金利や原油価格の反応については、GDP統計を解説した記事の方を参照してほしい。
市場の反応
FedがGDP統計の悪い部分を無視したことで、会合後短期的に長期金利は上昇し、ドルは上がった。以下は長期金利のチャートである。
以下はドル円のチャートである。
個人消費を押し下げたものがまさに長期金利だから、Fedは自分で自分の予測を失敗させる運命に追い込んだということになる。このままFedの強気が続けば、いずれ金利(特に短期の金利)は転換点を迎えるだろう。
現在、金利先物市場は今年の利上げを残り2回(1回より2回の確率がやや高い)と推測しているが、果たしてそれは可能だろうか。市場がもう少しタカ派になれば、それに反対するトレードを開始することが出来る。