フランス大統領選挙: 反EUルペン氏に不利な世論調査結果

フランス大統領選挙の決選投票の日程が現地時間5月7日に迫っている。決選投票では親EU、親グローバリズムのマクロン氏と、反EU、反グローバリズムのルペン氏が争うことになっているが、焦点となっているのは第一回投票で敗北したフィヨン氏やメランション氏などの候補の支持者が、どちらの候補に投票するかということである。

第一回投票の得票率

先ず、4月23日の第一回投票での得票率は以下のようになっている。

  • マクロン氏: 24.01%
  • ルペン氏: 21.30%
  • フィヨン氏: 20.01%
  • メランション氏: 19.58%

この得票率の結果、マクロン氏とルペン氏が決選投票に進むことになったのだが、ではフィヨン氏とメランション氏の支持者は、決選投票ではどう行動するのか?

他候補の支持者たち

先ず、元首相であるフィヨン氏の支持者は主流派であり、反EUのルペン氏からは距離がある。では左派だが同じく反EUのメランション氏の支持者はどうなのかというのが、決選投票での論点となるわけである。

第一回投票に勝利したルペン氏は、アメリカのトランプ大統領のように反グローバリズムの観点から労働者への配慮を示し、左派の有権者の支持を取り付けようと努力している。

しかし、ここで問題となるのが表題の世論調査である。ロイターによれば、メランション氏の政治運動に参加するメンバー43万人のうち24万人に対して行われた世論調査で、34.8%が決選投票ではマクロン氏に投票すると回答、29.1%は棄権、36.1%は白紙票と答えている。つまり、メランション氏のコアな支持層にとってルペン氏は選択肢にないということになる。

ちなみに全体の世論調査(ロイター)では、マクロン氏の支持率が60%、ルペン氏が40%となっている。アメリカ大統領選挙の場合と同じく、有権者は世論調査ではルペン氏支持を表明することを渋る傾向があるため、例えば55%と45%くらいであればルペン氏にも勝算があると言えるだろうが、あと数日でどれくらい縮めることが出来るか。

ちなみに、わたしの周りの金融関係者はマクロン氏の勝利が決まったものだと考えている。これは親EU、親グローバリズムの欧米のいわゆる「エリート」層だけではなく、アメリカ大統領選挙でトランプ氏の勝利を予想していた一部の人々も、ルペン氏の勝利は難しいものと見ている。つまり、今回の選挙のオッズはそういうものだということである。

フランス大統領選挙と投資戦略

こういう状況で投資戦略に関して言及しておきたいのは、市場がマクロン氏の勝利をほぼ確定と考えている場合、ルペン氏の勝利に賭けるポジションを取ってマクロン氏が勝った場合にも、それは織り込まれているため、損失は少ないということである。

したがって、マクロン氏勝利が既定路線になればなるほど、例えばユーロの売りや、リスクオフで上がる債券の買いなど、ルペン氏勝利に賭けるポジションの期待損失は下がることになる。市場がマクロン氏勝利を確信する瞬間があれば、そのコストはほとんどゼロに近付くかもしれない。

わたしもマクロン氏が既定路線だと考えてはいるが、もしそういうタイミングがあれば、ルペン氏勝利の際に利益となるポジションを少し取っておくのも悪くないだろう。

これはルペン氏が勝つと予想するからではない。確率が低くとも、予想が外れた時の損失が非常に限られるならば、そのトレードの期待値は悪くないものになる可能性があるからである。

ポジションは単に予想を当てるためのものではなくリターンの期待値を考えるものであり、そして全ポジションの総体であるポートフォリオを構築することとは、単に個別銘柄の上下に関して個別のポジションを取ることではない。ここの読者であれば、この話は理解してもらえるだろう。