トランプ相場における長期金利の動きを見事に当て続けてきた債券投資家のガントラック氏が、長期金利のさらなる下落を予想している。アメリカの長期金利が更に下落するということは、ドルの下落、そして間接的には金価格の上昇を意味している。
金利上昇の停滞
トランプ相場以前には1.6%-1.8%程度の水準を推移していたアメリカ長期金利だが、トランプ政権の経済政策への期待から経済成長率とインフレ率の上昇が予想され、結果として長期金利は一時2.6%付近まで上がった。経済成長率、インフレ率と金利の関係については以下の記事を参考にしてほしい。
しかしトランプ政権と米国議会との交渉が行き詰まり、トランプ大統領の運営能力に疑問が生じると、投資家は経済政策の実現に懐疑的になり、長期金利は下落を始めた。トランプ大統領は政権内の反グローバリズム勢力を排除することで議会に媚を売り、議会の政治家との交渉を可能にしようとしている。
しかしいずれにしても経済政策の実現には時間が掛かりそうである。
2017年の長期金利の動向は?
そこで投資家が考えるべきは長期金利の動向である。長期金利が下がればドルが下がることになるので、日本の投資家も興味を惹かれるところであるはずである。
先ず、現状長期金利のチャートは以下のようになっている。
トランプ相場における長期金利の急騰と、その後の行き詰まりの両方を正確に予想したガントラック氏は、Bloombergによるインタビュー(原文英語)で2017年の長期金利の動向について以下のように予想する。
長期金利は恐らく2%を少し下回る水準まで下落し、その後上昇を再開するだろう。長期金利が今年中に3%を超えることはないと思う。
つまり、ガントラック氏は長期金利の中期的な調整を予想しているのである。この予想をドルに置き換えればどうなるだろうか? ドル円のチャートは以下のようになっている。
日銀が市場から完全に無視されている今、ドル円はアメリカの動向によって動いている。ガントラック氏の長期金利予想をそのままドル円に適用すれば、ドル円は今後105円を少し下回る程度まで下落するが、その後上昇を再開する、といったところだろう。
「空白期間」
ガントラック氏の予想は、ここでわたしが繰り返し表明している「経済政策への期待による上昇相場から実際に政策が実行されるまでの空白期間」シナリオにも合致している。
トランプ政権に限らず、多くの政権の誕生は経済政策への期待とともに迎えられるが、実際に予算が組まれ政策が実行されるまでには半年から一年ほどの時間が掛かるものである。
その間に相場がどう動くかと言えば、トランプ政権と政策が似ているレーガノミクスの例をここでは何度も持ち出している。
レーガン大統領は財政出動などの政策を打ち出したが、低金利政策が遅れたことによって、レーガン政権下の「空白期間」にあたる1981年から1982年にかけて米国株は25%ほど下落した。トランプ政権の場合は、米国株の明暗は法人減税への期待がどれだけ維持出来るかに掛かっていると言うべきだろう。
しかし、いずれにせよ長期的なトレンドではなく、短中期的な動向を予測して相場に臨む場面ということになる。そのためには、ガントラック氏のように長期金利が短期、中期、長期でそれぞれどのレンジに収まるかということを考える必要があるのである。
結論
個人投資家にとって難しいだろうことを承知で言えば、こういう市場で有効な投資戦略は、あらゆる市場でオプションを売っておくことである。長期金利にレンジがあれば、債券市場(国債、ジャンク債、等々)や金相場、為替市場などでオプションを売ることが出来る。また、原油価格にもある程度レンジがあるため、原油市場でもオプションを売ることが出来る。少なくともわたしはそうしている。
オプションについては先ずは以下の記事を参考にしてもらいたい。より戦術的なオプションの使い方についてもいずれ説明したいと思っている。