3月のFOMCは予想通り利上げ決定となったが、今後の米国利上げと株価見通しについて著名投資家のジム・ロジャーズ氏がSprott Money Newsのインタビュー(原文英語)で語っている。
米国利上げと株価水準
2015年12月と2016年12月の分を合わせると、リーマンショック以来3度の米国利上げが行われた。通常、金利を上げれば株式市場にはマイナスとなり、これまで紆余曲折ありながらも市場最高値を更新してきた米国株の先行きが懸念されるが、ロジャーズ氏は特に弱気派であると言えるだろう。彼はこう語っている。
間違いなく金利は世界中で上昇を続けるだろう。
ゼロ金利や、いくつかの場所ではマイナス金利のような状況が人工的に作り出されている。これは普通ではない。続けられないし、続かないだろう。
利上げが続けば株式市場は崩壊する。これはトランプ相場で株を買っている投資家でさえも同意する事実だろう。しかし問題は、何をきっかけに株式市場が崩壊するかという点である。
多くのファンドマネージャーは、トランプ氏が選挙で勝利した後、利上げで即時株安となるシナリオを撤回した。少なくともある程度の株価上昇は合理的であるというのが多数派の意見だろう。
しかしロジャーズ氏は、トランプ政権の経済政策をある程度評価しながらも、トランプ相場前の株価崩壊予想をそのまま維持した。彼は以下のように述べている。
歴史を振り返れば、Fedが3度利上げを行なった場合、通常株式市場に問題が生じることになる。3度目の利上げでそうならなければ、4度目でそうならなかったことはない。遠からず4度目の利上げがあるだろうが、それは株式市場と実体経済に対する死刑宣告になるだろう。
この主張はトランプ相場以前の彼の主張とまったく変わっていない。わたしの知る限り、株式市場に関する予想を修正さえしていない著名投資家は彼くらいではないか。
個人的には、このロジャーズ氏の主張は誤りであるか、少なくとも厳密ではないと思う。何故ならば、株式市場に直接影響のある金利は主に長期金利だが、今年利上げが3回(あと2回)あることは既に長期金利に織り込まれており、次の利上げ決定の事実が長期金利を更に上昇させるわけではないからである。
したがって、4度の利上げが市場を崩壊させるならば、昨年までの2回を合わせて既に合計5回の利上げが織り込まれている現状で株式市場が崩壊していなければ理屈に合わない。長期金利は既にその水準に達しているからである。
しかしながら、時期的な話をすれば、残りの利上げが行われる2017年後半に株式市場が調整する可能性については、十分に有り得るものと考えている。理由は金利上昇によるアメリカ経済の減速である。
金利、実体経済、株式市場
長期金利は株式市場の他に、住宅ローンや自動車ローンなどの金利を通じて実体経済に影響を及ぼす。金利が上がれば消費者が借金をして消費をすることが難しくなり、実体経済が減速するのである。
その減速を減税と規制緩和と公共事業で相殺するのがトランプ政権の経済政策だが、経済政策の進捗はと言えば、選挙で敗北した民主党の抵抗で遅延していると言わざるを得ないだろう。
そうなると、経済政策が間に合わず、長期金利の悪影響だけがGDP統計に現れてくるリスクシナリオが現実化する。そうなれば、少なくとも株高一辺倒の現在の状況は是正されることになり、株価は調整することになるだろう。
それが実際に1980年代のレーガノミクスの初期に起こったことである。ほとんど同じ原因によって米国株は20%の暴落を経験したことは以下の記事で説明している。
トランプ政権は同じ失敗を避けることが出来るだろうか? 長期金利がアメリカの実体経済に与える影響については、経済指標などを逐次報じることでリアルタイムに説明してゆくつもりである。