債券とは何か? 価格下落で金利が上昇するのはどういう計算か?

グローバルマクロ投資入門記事である。投資におけるグローバルマクロ戦略とは、世界経済の動向を予想し、株式や為替、債券などに複数の国と市場にまたがって投資するヘッジファンドの投資戦略であり、ここでは金融市場について何も知らない投資初心者が、最終的には機関投資家と同じ視点でグローバルマクロ投資を行なってゆけるように入門記事を逐次書いてゆきたいと思っている。

先ずは、世界の金融市場には株式市場、為替市場、商品市場など様々な市場があることを説明した上で、投資初心者はどの市場から始めるのが良いかという話題を扱ってゆこうと思っているが、最初には恐らく個人投資家に一番馴染みのない債券市場について説明することから始めたい。

債券市場は個人投資家に馴染みの薄い市場であるにもかかわらず、グローバルマクロのヘッジファンドが最も重要視する市場である。債券市場とはいわゆる金利を決定するものであり、金利は株価や為替レートなどに影響を与える、金融市場のなかで最も重要な指標だからである。

逆に言えば、多くの個人投資家はプロの投資家が重要視する情報を軽視してしまっていることになる。しかしここの記事を読む読者は、そうはならないだろう。そのために記事を書いているのである。

債券市場

債券市場について説明するためには、先ず債券とは何かということから説明する必要がある。

債券とはつまり借金のことである。例えばある人が100ドルを一年間貸し付け、20%の金利を取るとすると、100ドル投資したものが翌年には120ドルになって返ってくるわけである。この「翌年に120ドルを受け取る権利」が証券化され、市場で価格が付いて売買されているのが債券ということになる。

では、翌年に120ドルを請求する権利の価格は現時点ではいくらになるだろうか?

先ず、貸したお金は必ず返ってくるわけではない。借金は借り主が破産すれば踏み倒される可能性や、一部しか返済されない可能性がある。逆に言えば、そのリスクを取るからこそ債券投資家は(この場合)20%の利回りが得られると言える。

ただし、リスクに見合う報酬(つまり金利)が債券発行時点で原本の20%だと判断されたとしても、その後借り主が職を失うなどで返済の見込みが悪化し、より高い金利でなければその借り主にお金を貸すことに納得できないような状況になることがある。より多くのリスクを取るからには、投資家はより多くの利益を求めるからである。

そうなると、元々100ドルで発行されたこの債券の価値は下がり、価格は下落することになる。例えば発行時点で100ドルだったものが80ドルまで下落したとしよう。しかし変わったのは債券の時価だけであり、借金が返済される時には120ドルが返ってくるということは変わっていないから、投資家は価格下落後、80ドルの投資で120ドル返ってくる債券を買えるということになる。この場合、この債券の現在の金利は50%ということになり、元々の20%から債券価格が下落したことによって金利が上昇したのである。

結論

これが「借金が証券化されて価格が付き、市場で売買されているもの」であるところの債券の、価格と金利の関係である。金融関連のニュースなどでは「国債の価格が下落し金利が上昇した」などと書かれることがあり、投資初心者には分かりにくいことと思うが、そのからくりは上記の通りである。

また、上記の説明で、借り主の信用が落ちて借金返済が危うくなれば、金利が上昇するということも理解してもらえたと思う。一般に借り主の信用が高ければ高いほど金利が低く、逆に借り主が破産寸前の場合、高い金利を見込めなければお金を貸す投資家が見つからないということになる。

したがって、一般に政府が発行する国債は金利が最も低く、企業が発行する社債は国債よりも金利がやや高くなり、個人向けに貸し出される消費者金融のローン金利などはそれよりも高いものとなる傾向がある。

では、国債や社債などの金利の具体的な数字はどう決まるのだろうか? 債券市場が株式市場と違うところは、債券の価格の理論値(したがって金利の理論値)がある程度定まるということである。金利の理論値を計算するために必要なデータは、経済成長率やインフレ率などの経済全体に関する指標である。次の記事ではその辺りについて説明してゆく。