トランプ政権を侵食するアメリカ政府のロシア嫌い

アメリカ政府の、というよりはアメリカ民主党のロシア嫌いが爆発している。

ロシア大使との対話を巡ってフリン大統領補佐官が辞任させられたのは報じたばかりだが、今度はジェフ・セッションズ司法長官も昨年ロシア大使に会っていたとしてアメリカのニュースでは大騒ぎである。

アメリカ政府のロシア嫌い

アメリカの政治界においてはロシアと対話をしただけで大罪と見なされるらしい。トランプ大統領は、トランプ政権はロシアと単に話しただけでこれほど批判される一方で、オバマ大統領などはアメリカ政府を代表してイランの核兵器開発を認めたにもかかわらずメディアは批判していないと皮肉っていたが、この矛盾を民主党がどう考えているのかはわたしにも理解不能である。

トランプ大統領はこうした騒ぎに相当疲れているようであり、これまでは「ロシアと良い関係を築くことは悪いことではない」「強硬姿勢を示すことの方がよほど簡単だが、アメリカ国民にとって、そして世界にとって正しいことをしたい」と粘り強く説明をしてきたが、メディアが聞く耳を持たないことから「民主党も同じことをやっているではないか」と批判する方向に方向転換したようである。

トランプ大統領の反論

トランプ大統領はTwitter(原文英語、その1その2)で民主党のシューマー上院議員とペロシ下院議員がロシアと関係を持っていたと指摘した。トランプ氏はシューマー氏とプーチン大統領が仲良く語らっている写真を添えて以下のように述べている。

シューマー上院議員のロシア及びプーチン氏との関係について直ちに調査を開始するべきだ。酷い偽善だ!

そしてシューマー氏の後には、ペロシ氏のロシアとの親密な関係と、その関係について彼女が嘘を言っていたことについて調査することを要求する。

また、同じくTwitter(原文英語)で、トランプ大統領は件のロシア大使がオバマ政権と親密な関係にあったことを指摘している。

ジェフ・セッションズと面会したロシア大使はオバマ政権時のホワイトハウスを合計22回、昨年だけでも4回訪問していた。

個人的な感想を言えば、アメリカの政府なのだからロシア政府の関係者と話をするのは当たり前のことだろう。その内容が問題となることはあっても、対話自体が問題になるというのは理解しがたい。アメリカのメディアがこれだけの騒ぎを起こして何がしたいのか、個人的にはもう理解の範疇を超えている。

アメリカ民主党とロシア市場

しかし投資家として問題になるのは、ルーブル建て資産に関するポジションをどうするかということである。以下の記事ではロシア経済が原油安とロシアルーブル暴落から回復しつつあるということを説明した上で、トランプ政権の親ロシア政策が暗礁に乗り上げない限りロシア市場への投資を継続するとした。

しかし現状をどう判断すべきかは微妙なところである。トランプ大統領の意思は明確だが、彼は明らかに疲れている。そもそも彼には、そこまでして親ロシア政策を取る理由がない。政権運営に支障が出るならば、その姿勢を取り下げるかもしれない。彼は会見(原文英語)でこう言っていた。

自分にとってはロシアに強硬姿勢を取る方がよほど簡単だが、それではロシアと何らかの合意に至ることは出来ないだろう。今では、アメリカとロシアが取引出来るかどうかは分からない。分からないのだ。そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。

この会見は彼が相当参っていた時のものであり、本音ではメディアの圧力に屈して政策を変えるなどということは、彼はやりたくないはずではある。

しかしロシアトレードは、少なくとも不安要素の何もない夢のようなトレードではなくなったようである。アベノミクス初期の円売りや、2016年のゴールドの買いのような安全なトレードとは違うということになる。

したがって、ルーブル建て資産(主にロシア国債)の買いポジションについてはここで一旦閉じることとしたい。結果はルーブルが僅かに上昇し、国債金利は上がった(価格は下落)ものの、保有していた期間の金利の分のプラスがあるため、合計では僅かなプラスとなったが、ほぼ横ばいである。参考までにドルルーブルのチャートを挙げておく。ドル安ルーブル高のトレンドは変わっていない。

トランプ相場のような不安定な状況では、小刻みにスタンスを変更しながらポートフォリオを頻繁に調整してゆくしかない。それでも利益が出ないわけではないが、それではここで公表してゆくのが難しいのである。

個人的には現在、トランプ政権の動向次第で頻繁に開いたり閉じたりするポジションを多数抱えている。その中でもルーブルとロシア国債は比較的息の長いトレンドかと思ったのだが、そうではないようである。そうなると、ここで公表するのに適したポジションが無くなってしまう。

そこで、代わりにこの機会を利用して投資初心者向けのグローバルマクロ投資の記事をいくつか書いてゆこうかと思っている。勉強をする意志のある読者に何か有益な情報を提供出来ないかと長らく考えてきたが、恐らく今は良い機会だろう。