アメリカ利上げである。12月13日から14日にかけて、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を行う。利上げを決定することが織り込み済みとされているが、しかしそれでも会合の結果には注目すべき理由がある。
ほぼ織り込まれている12月利上げ
金利先物市場によれば、今回の会合で利上げを行う確率は95.4%との織り込みとなっており、逆に言えば利上げをしない確率は4.6%しかないと市場が考えているということである。この状況でFedが利上げをしなければ逆にかなりのサプライズとなるが、Fedは利上げをするものと思われる。市場で長期金利が既にかなり上がってしまっているからである。
しかし、では今回のFOMC会合は気にせずとも良いのかと言えば、そうではない。何故ならば、今回の会合はアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利して以来初めての会合であり、トランプ次期大統領が主張している減税や公共事業などの政策をFedがどう受け止めているのか、このまま経済成長への期待で市場の金利が上がってゆく場合、政策金利も追従して上げてゆくのか、それとも長期金利が上がったとしてもFedは慎重な姿勢を維持するのか、などということが声明やイエレン議長の記者会見などで発表されると思われるからである。
声明や記者会見はどうなるか?
イエレン議長としては、まだ詳細が明らかになっていない新政権の経済成長について、具体的なコメントは避けたいところだろう。しかしこれだけ市場が大きく反応している中、声明文も以前のものそのままという訳にも行かないし、記者会見でもある程度の言及をしなければならなくなる。
先ず声明文だが、FOMCの声明文とはFedがアメリカ経済の現状をどう見ているかということ、そしてその見通しに沿って今後の金融政策をどうしてゆくかということが書かれたものであり、毎回の会合で一部を書き換えながら更新してゆくものである。
今回の会合では少なくとも通常以上に書き換えが進むと思われ、新たな文面がどのようなものになるかが注目される。今回発表される声明は、トランプ相場における今後の声明文のもととなるものであり、今後のベンチマークになるだろう。
記者会見で注目すべきは、金利上昇のリスクがどう評価されるかということである。金利上昇がアメリカ経済のリスクとなる可能性がかなり高い理由は、長期金利の適正値を概算した以下の記事で説明している。
そしてより重要なのは、金利上昇が株価や不動産価格など金融市場に与える影響である。レイ・ダリオ氏の言葉を思い出そう。
問題は、こうした動きがいつ壊れ始めるかということである。例えば、名目の(そしてより重要なのは実質の)金利の上昇が、他の資産クラスの価格を毀損し始めるのはいつになるのか?
学者であるイエレン議長に金融市場の予測が出来るとは思わないが、言及があるかどうかだけでも注目しておこう。
トランプ次期大統領の経済政策はマクロ経済学的に評価出来るものではあるが、それでも一筋縄では行かないのが現在の世界経済である。世界経済はあまりに大きな爆弾を抱えている。