8月26日にアメリカのジャクソンホールで行われている会合でFed(連邦準備制度)のイエレン議長が講演を行った。毎年行われるこのイベントではFedの議長が重大発表を行うことも多く、金融市場はここ数日この会合に注意を払いながら上下していた。
講演ではイエレン議長が「引き続き堅調な労働市場や、アメリカ経済の先行き、そしてインフレ率を考えれば、ここ数ヶ月で利上げへの状況は整いつつあると言える」「雇用と物価をわれわれの目標に対して維持してゆくためには政策金利を徐々に上昇させてゆくことが妥当であると引き続き考える」と述べ、利上げへの意欲を示した。
最近の記事でも報じてきた通りアメリカのコアインフレ率(食品とエネルギーを除く)は現在2%を超えて推移しており、インフレ率がこれ以上上がるようであればFedはより素早い利上げを強いられる可能性のある状況となっていた。
しかし一方ではGDPは前年同期比で1.23%となっており、Fedは高まるインフレ率と低迷する経済成長の板挟みとなっている。
ジャクソンホールへの市場の反応
イエレン議長が利上げの意欲を示した一方で、市場はこれをタカ派とは受け取らなかったようである。執筆時点で金価格は上昇し、米国株も上がっている。利上げが行われると市場が解釈したのであれば、これら2つの数字は当然ながら下落するはずである。
恐らく一つには、市場がジャクソンホールにおける会合を過度に恐れていたというのがあるのだろう。投資家はイエレン議長がより強力に利上げを主張してゆく可能性を考え、株式市場や金相場のポジションを控え目にしていたのが、講演が来月の利上げを積極的に推してゆく内容ではなかったために買い戻しが行われているというのは一因にはあるだろう。
しかし9月に利上げをしないのであれば、11月は大統領選挙があるため、今年の利上げがあるとすれば12月の可能性が一番高くなる。その頃には第3四半期のGDPも発表されていることとなり、もしその数字が悪ければ、もしかするとFedはもう利上げを行うことが出来ない可能性もある。
しかしながら何度も言うように、投資家には一度や二度の利上げを過度に気にするよりも、長期的な視点を見失わないようにすることの方が大事だろう。長期的にはアメリカ経済は利上げには耐えられないのである。