先週にはフランスのニースで大量殺人、つい数日前にはドイツ南部のヴュルツブルクでアフガニスタン人の難民の少年が列車内で斧を振り回し、複数名に重症を負わせたところであるというのに、今度はミュンヘンで銃乱射事件である。
7月22日、ドイツのミュンヘン北部にあるマクドナルドで、18歳のイラン人の男性が銃を乱射し、14歳の若者を含む9人が死亡、27人が負傷した(毎日)。証言によれば、「店内で食べていた子供たちの顔に向けて発砲した。子供たちは逃げることもできなかった」(毎日)そうである。
ヨーロッパの移民問題
昨年から続いている移民関連の事件を一度纏めておこう。発端は昨年10月のパリ同時多発テロである。複数箇所で銃撃と爆発が起こり、100名以上の人々が亡くなった。パリにいる友人からは路上で何人もの死体を見たとの惨状を聞いた。痛ましい事件である。
しかし事件はこれで終わらなかった。今年の3月にはベルギーのブリュッセル空港で爆弾テロが起き、30名以上の人々が亡くなった。そして先週のニースでは花火を見物に来ていた観客に大型トラックが突っ込み、84名の人々が犠牲となった。
また、ヨーロッパの抱える移民問題はテロリズムだけではない。大晦日のケルンでは1,000人以上の移民の集団が徒党を組んで大暴れし、地元の女性に夜通し性的暴行を加えた。
これは一回限りの事件ではなく、同様の事件が5月にドイツのダルムシュタットで起こっている(AFP)。移民擁護の人々は否定するだろうが、これはイスラム系移民の女性観に根ざした犯行であり、確実に文化的な問題である。
ドイツで生まれ育った今回の銃撃犯
ヨーロッパの移民問題における文化的側面の重大さは、今回の銃撃の犯人が難民問題が悪化する以前からヨーロッパに移住してきた移民の子孫である事実によって再確認されると言える。
今回の銃撃犯は複雑な背景を抱えていたようである。この人物はイラン系ではあるが、イランとドイツの二重国籍であり、ミュンヘンの生まれであると報じられている。また、襲撃時には「アッラー・アクバル」と叫んだ(The Sun、原文英語)と報じられている一方で、「俺はドイツ人だ、くそったれの外国人ども」(CNN、原文英語)とも叫んだとされ、この人物の複雑な文化的背景が読み取れる。
この若者は何故このような事件を起こしたのか? ヨーロッパにおいて移民が抱える問題とは何か? それはヨーロッパにおける移民の現状をより理性的な目で見れば明らかになることである。
移民問題の本質的矛盾
問題の本質を端的に言えば、経済的状況の改善を求めて他の国に移住することは多くの場合合理的な選択とは言えないということである。
今回の銃撃犯は難民問題が悪化してからドイツに来た移民ではない。つまり戦争難民ではなく、経済移民として職を求めてドイツにやってきた移民の子孫ということになる。そしてそうした移民の実情は、ヨーロッパに来る前の彼らの希望に反して、必ずしも良いとは言えない。事実、この銃撃犯の家族も失業者保険を受け取りながら生活していたらしきことを、本人が銃撃の前に語っていたとの情報(Telegraph、原文英語)がある。
何故経済移民は渡航前に望んだ生活が出来ないのか? それはそもそもヨーロッパに移民を受け入れる経済的余裕などないからである。ユーロ圏全体の失業率が10%を超えるような状況で職を求める移民を受け入れたところで、失業者が増えるだけである。そうした移民の惨状についてはここで何度も説明してきた。
移民がヨーロッパに来たはいいが、家族が仕事にありつけないとき、子供たちは何をさせられるかを日本の読者はご存知だろうか? 良くて物乞い、やや悪ければスリ、最悪の場合は売春宿行きである。
そもそも自分の生まれ育った環境と全く違う国で、言語も分からないのに新たな生活を始めることは容易ではない。そうした現実的な困難さを考慮することなく、移民賛成派は移民受け入れを宣言する。それに載せられて多くの経済移民が中東からやって来る。ドイツが受け入れた移民の多くは難民ではない。パスポートの偽造が出来る地域から来る移民を、難民とそうでない経済移民とに分けることはそもそも不可能であった。そして彼らの多くはどうなるか? 見知らぬ国で貧困に直面するのである。
今回のミュンヘンの銃撃犯は、上記のように政治的に進められた移民政策の犠牲者である。彼は自分の家族と文化的背景の異なる人々の間で大いに悩んだことだろう。わたしはずっと移民政策に反対しているが、それはテロや性的暴行の犠牲者になる人々の側に立つという理由だけではない。多くの移民にとっても自国に居たならば生じなかったような問題に直面しなければならない結果となるからである。
移民賛成派
では何故移民賛成派は移民政策を進めたがるのか? 主な理由は二つある。一つには経済的利益のためであり、これに該当するのは安い労働力が欲しいグローバル企業である。日本ではユニクロの柳井氏が労働力目当ての移民推進派として有名である。マスコミがこぞって移民政策を擁護するのはここに理由がある。
上記の大晦日の性的暴行事件は、移民政策を擁護するため事件発生後数日のあいだ、ドイツ国内でほとんど報道されることがなかった。政治家と産業界は移民政策に関して完全に腐敗している。
そしてもう一つは政治的理由である。ドイツ人がそこまでして移民を受け入れたい理由については下記の記事で説明した通りである。
こうした人々が、難民を受け入れる優しい自分に酔った結果がこれである。彼らは移民のことなど一切考えていない。自分の理想信条が大事なのである。そうして犠牲になるのは見知らぬ土地で貧困に苦しむ移民と、今回のような大量殺人の犠牲者たちである。
自分の勝手な政治的信条のために、文化的に相反する人々を無理矢理同じ場所に住まわせ、当然に予想できる不必要な軋轢を人々の間にあえて育み、そして最後にはどうにもならない悲劇の結果、互いに殺し合わせる罪深い行動はどうかもう終わりにしてほしい。彼らは今回の銃撃犯の若者に見る悲劇が分からないのか。はっきり言うが、移民賛成派は人殺しであり、銃撃犯には殺人者としての不幸な人生を、そしてあまりに多くの被害者には予期せぬ無残な死をもたらす犯罪者である。
別々の場所で暮らしていれば互いに憎悪を持つことなどなかったであろう人々が、移民政策によって軋轢を産む状況に強制的に追い込まれ、互いに殺し合わされている。このような混乱すべてがただ不必要なのであり、メルケル氏のような移民賛成派にもう少しの思慮深さがあったならば容易に避けられた事態なのである。
そしてそれは日本で同じ政策を推進する安倍首相とて例外ではない。日本人はこの愚かな政策にもっと声を上げるべきである。
イギリス人だけが文化の違いを過少評価することなく、こうした無秩序に反対の声を上げた。
わたしがパリのテロ事件より前から警告していた移民政策の危険性に、世界中がようやく気付きつつある。何もかもが遅いのである。